映像と音でリアルな場を再現し、人々が交流できるようにしたインターネット上の仮想空間が「メタバース」という呼び名でメディアを賑わせはじめた現在、ビジネスシーンにおいては、新たなフィールドとしての期待が日々高まりつつある。
ただ一方、「日本企業でメタバースを認知しているのは約半数・活用に関心があるのは1割」*との調査結果が示すとおり、具体的な取り組みを始めている企業は、まだ少数派といえそうだ。
こうした中、人材派遣やアウトソーシングを通じた販売支援・営業代行などの事業を展開するパーソルマーケティング株式会社(東京都新宿区)は2022年1月、いち早くメタバース市場への参入を発表。同4月から専門部署「メタバースデザイン事業部」を設け、自社と顧客企業の新たな展開にチャレンジしている。
その狙いと現況、さらに今後の展望を、同事業部の川内浩司部長に聞いた。
*出典:「メタバースのビジネス利用に関する日本企業1,000社調査」(2022年3月実施、PwCコンサルティング合同会社)
パーソルマーケティング株式会社 メタバースデザイン事業部 部長 川内浩司氏
−まず、メタバースデザイン事業部の取り組みについてお聞かせください。
川内氏:1987年設立の当社はこれまで、営業支援、販売支援、店舗支援などリアルの場で人材サービスのノウハウを蓄積し、営業・販売拠点を丸ごとお預かりする運営代行サービスなどを提供してきました。
そうした知見をもとに、この4月に設立したメタバースデザイン事業部では、私を含め数人のメンバーが、メタバース上での「接客・販売」「案内・運営」業務のほか、メタバースへの「出店」「誘致」の支援、アバタースタッフの育成支援といった分野で事業開拓を目指しています。
顧客企業への具体的なサービスとしては、メタバース上で活動する企業への「人材派遣」はもとより、その前提となるメタバース活用に向けた「コンサルティング」、さらにワールド(メタバース上の空間)の構築・運用支援という、合わせて3つの類型を想定しています。
−どのような狙いで参入を決められたのですか。
川内氏:高齢化に伴って増加する在宅介護、あるいはコロナ禍を機に加速した脱都心の動きなどで、働く人々のニーズが今後いっそう多様化します。
職場までの距離や時間が制約条件となり仕事を見つけづらかった方々にも、自宅から直接アクセスできる仮想空間ならば、マッチする職場をより多くご紹介できるはずと考え、メタバース市場への参入を決めました。
「人材サービスの会社がメタバースに参入」というと、一見縁遠いように思われるかもしれませんが、私たちは「近い将来、人がメタバースを通じて働くのは当たり前になり、選べる勤務地の1つがメタバースという時代が来る」とみており、メタバース勤務を想定したトレーニングプログラムも開発しています。
−メタバース向けのトレーニングとは、具体的にどのようなものですか。
川内氏:例えば、販売員が顧客とアバター(仮想空間上で自分の分身になるキャラクター)同士でコミュニケーションを取る練習などです。
当社では対面のコミュニケーションが得意な販売員の登録が多く、私たちは当初、そうした方々のスキルはメタバースでもほぼそのまま生かせると考えていましたが、実際に試してみると、勝手が違う部分も多いと分かりました。
というのは、アバターでは音声やテキストのチャットを通じて言葉は伝えられるものの、会話中の間の取り方、目線、身のこなしといった要素は、まだ十分にコントロールできないからです。
つまり、そうした要素を工夫して成果を上げていた、リアルで“売れる”販売員も、メタバースでは別のスキルが追加で求められそうだということです。
リアルで積んだキャリアをバーチャルでの活躍にもつなげていただけるよう、トレーニング方法の研究を続けているところです。
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