Web3の世界では、「参加者による権利や権限の共同管理」という思想が好まれる。ブロックチェーンというインフラそのものが、公共財の性質を帯びているからだろう。
NFTプロジェクトでも同様に、IP(知的財産)コンテンツの権利を開放する動きがある。CC0と呼ばれるいわゆる著作権フリーの状態にして、参加者の誰もが二次創作や商業利用にキャラクターを活用できるようにするのだ。具体例としてNFTプロジェクトの「Nouns DAO」では、キャラクターの自由な商業利用が認められている。
このNFTプロジェクトの仕組みは、IPビジネスにおける既存の事業モデルの対極に位置していると言えるだろう。既存のIPビジネスでは事業者が著作権や版権を管理し、この権利によって収益を得ているからだ。従来の有名キャラクターのほとんどが、このビジネスモデルによって運用されている。言い換えると、Web3の世界で著作権を開放しているIPコンテンツは、小規模なクリエイター集団による新興の作品に限られているのだ。
このような状況の中で、IPホルダーでありながらWeb3的なキャラクター活用に挑戦している大手企業が存在する。朝日放送グループホールディングス傘下の「株式会社ディー・エル・イー(東京都千代田区)」だ。同社は、「秘密結社 鷹の爪」という全国的な知名度のIPコンテンツを保有している。
この有名IPを駆使して、NFTプロジェクト「TAKANOTSUME DAN NFT(以下、鷹の爪団NFT)」を打ち出したのだ。NFT保有者になると、保有する「鷹の爪団NFT」の商用利用が一定の条件下で認められるという。
この他にも「鷹の爪団NFT」では、クリエイターによる二次創作を促す目的で、2023年12月から「二次創作祭り」というイベントが開催された。このようなファン参加型の企画は、まさしくWeb3的だと言えるだろう。しかし、一体どのような理由で、有名IPの商業利用や二次創作の権利開放に踏み切ったのだろうか。
この「鷹の爪団NFT」のプロジェクトを指揮するのが、フューチャーラボ事業本部 Web3事業室で室長を務める椎木 秀樹(しいき ひでき)氏だ。学生起業家として事業を立ち上げ、イグジットした経験を持つ人物である。椎木氏曰く「NFTを活用すれば、IPコンテンツにおける新たな事業モデルを確立できる」という。二次創作や商業利用の制限を緩和した場合、消費者だけでなく事業者もメリットを得られるようだ。果たして、ディー・エル・イーはWeb3領域への参入にあたってどのようなビジョンを描いているのか。
今回は、株式会社ディー・エル・イーのWeb3事業室で室長を務める椎木氏へ、同社のNFTプロジェクト「鷹の爪団NFT」を中心として、以下の項目について聞いた。
従来型のIPビジネスとWeb3における著作権フリーの動きは、本来相容れない性質のものだ。それにも関わらず、なぜ株式会社ディー・エル・イーはWeb3領域への参入を決めたのか。同社の取り組みから、IPコンテンツにおける未来のビジネスモデルが垣間見えるだろう。
ーまず、株式会社ディー・エル・イーの概要について、お聞かせください。
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