メタバースとはなにか?日本企業における事例や注目される理由を紹介!

コロナ禍の影響によって、リモートや非接触の体験が世界的に浸透しました。
その中で2021年にはFacebook社がMeta社に社名を変更するなど、「メタバース」がビジネスの新領域として脚光を浴びています。
しかしまだ黎明期の技術であるがゆえ、メタバースをビジネスに活かす方法を各社が模索している最中です。

この記事では実例を踏まえて、メタバースのビジネス展開におけるメリットやデメリット、注目される理由を紹介します。

メタバースはなぜ注目されるのか

メタバースがビジネスにおいて注目されている理由は、新たな商業空間に発展する可能性を秘めているからです。
これまでのメタバースは、SF小説の中でしか存在しない空想の産物でした。
しかし急速な技術革新によって、いよいよ一般消費者の手の届く段階まで実用化が進んでいます。

今後はメタバース上の都市でショッピングをしたり、仕事をしたりといった体験もできるようになるでしょう。
メタバース上の学校に学生が通う未来も、いまや夢物語ではなくなっています。
このような理由から、メタバースは新たなビジネスチャンスとして注目を集めています。

新型コロナウイルスの流行により、世界的にオンライン化やリモートワークが浸透しました。
人々が持つデバイスやその通信環境の整備が進んだ結果、メタバースの普及に向けた土壌が整いつつあります。
加えて、社会問題に取り組む上でもメタバースは重要です。例えば、メタバース上では移動に伴うCO2の発生がないため、環境負荷の低減を期待できます。

このように、人類にとっての新たな生活空間「メタバース」の登場によって、人間の生活も一変すると予想されています。

メタバースのメリットや活用の目的

メタバースは発展途上の技術であり、各社がその利用用途を模索している最中です。ここでは、メタバースの用途やメリットを紹介します。

メタバース空間でのマーケティング

メタバース空間に多くの人々が集まれば、マーケティングの場として重要な価値を持ちます。現実社会において、人が集まる場所では広告やイベントの開催といったマーケティングが行われます。
メタバースも同様に、企業のマーケティング活動の場として重要な場所になるでしょう。

すでに大手グローバル企業ではメタバース上にイベントスペースを開設するなど、本格的なマーケティング戦略のための取り組みが進んでいます。

メタバース空間の活用による生産性向上

メタバースでは場所や天候の制限を受けないため、生産性が向上します。例えばテナントショップの場合、全国各地に店舗を構えずともメタバース上の店舗での接客が可能です。
固定費を大幅に削減できる上に、施設管理に供する労力も不要となります。

ほかの例として、エンターテイメントの分野が挙げられます。
メタバース空間で音楽ライブを開催すれば天候や移動距離の制約を受けません。加えて収容人数の制限がなく、大きな興行収益を期待できます。

このようにメタバースは現実世界よりも自由度が高いため、生産性の向上に寄与します。

雇用の柔軟性向上

メタバースは、雇用の柔軟性を向上させます。
多くの人々がメタバースに集うようになれば、メタバース空間で働く労働者も登場するでしょう。
メタバースでの就労のメリットは、場所や通勤時間の制約に囚われない点です。
そのため、地方在住者や自宅介護が必要な人にとって新たな就労場所となります。

実際に人材派遣会社のパーソルでは、メタバースでの労働を見据えた研究に力を入れています。
アバターを介した接客業やバーチャルオフィスでのリモートワークが、近い将来に実現するかもしれません。

メタバース空間での新規事業

メタバースでは、かつて存在しなかったビジネスモデルが新たに誕生するかもしれません。
一例として、メタバース空間を設計する3Dデザイナーが挙げられます。
なぜなら、さまざまな企業がメタバースに参入する際に、各社の世界観を反映した空間「ワールド」を作るニーズが増加するからです。

他にも、メタバース専門のイベント業者やマーケティング業者が誕生するかもしれません。
通販からエンターテイメントまで、メタバースの影響はあらゆる業界に派生します。
そのため、今までにはなかった新しいビジネスモデルが誕生すると期待されています。

メタバースのデメリットや課題

各社がメタバース上でのビジネス展開を模索している一方で、現実にはさまざまな課題が山積しています。
ここでは、メタバースが抱えるデメリットや課題を紹介します。

メタバースに対する法規制が未整備

メタバースは登場して間もない技術であるため、法整備が追い付いていません。
そのため、法律に規定されていない懸念点も数多く存在します。

具体例として、以下の懸念が挙げられます。

  • 有名人へのなりすまし行為
  • アバターへの嫌がらせ、迷惑行為
  • 現実世界の意匠をメタバースに再現した際の権利問題

特に、有名人や有名企業の偽アカウントが乱立した際の被害は深刻です。
虚偽の情報が出回り、社会的に大きな混乱が予想されるからです。
現状では偽のアカウントを規制する仕組みがなく、メタバースが詐欺事件の温床になる可能性も否定できません。

ハード機器の普及

本格的なメタバース体験をするには、ハード機器(デバイス)の普及が欠かせません。
メタバースの描写には、膨大なデータ処理が必要です。
そのため、最新型スマートフォンの性能でも、まだ十分とは言えません。

臨場感のあるメタバース空間を楽しむには、高価なヘッドアップディスプレイやゲーミングパソコンが必要です。
加えて現行のヘッドアップディスプレイは重く、普段使いには適しません。
よってデバイスの小型化がさらに進まない限り、一般ユーザーにメタバースは浸透しないでしょう。

加えて、通信速度の問題もあります。屋外で快適にメタバースを楽しむには、5G回線の普及が欠かせません。
このように、ハード機器や通信網の性能が格段に進歩しない限り、メタバースの爆発的な拡大は望めません。

メタバースビジネスにおける前例のなさ

メタバースのビジネスへの展開について、いまだにロールモデルがありません。
そのため、各社が手探りでビジネスへの展開を模索している段階です。
メタバースの効果的な活用方法は、今後の試作の積み重ねによって判明するでしょう。

また、ユーザーがメタバースに慣れていない点も課題です。
現時点では、ほとんどの人がメタバースに触れた経験がありません。

そのためメタバースでイベントを行っても利用方法が理解されず、参加者が集まらない可能性もあります。
メタバース施策が広く効果を発揮するためには、ユーザー側のメタバースに対するリテラシーの醸成も待たなければいけません。

プラットフォームへの依存度の高さ

メタバースでは、共通の規格がありません。そのため各社が独自の規格を設定し、多種多様なワールドが展開されています。
さまざまなワールドが誕生したものの、なかには淘汰されて消滅を余儀なくされるワールドも出てくるでしょう。

自社が特定のプラットフォームに対して投資を進めたにもかかわらず、そのプラットホームが衰退するリスクも考えられます。

日本でメタバース事業に参入している企業・組織

大手企業

株式会社SHIBUYA109エンタテイメント

株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは、メタバースに渋谷の街を再現しました。
このバーチャルの渋谷で、広告やプロモーションビジネスの展開を視野に入れています。

従来の店舗型ビジネスにとどまらず、若者の感性に響く最新トレンドを発信する活動に力を入れています。

エイチ・ツー・オー・リテイリング株式会社/阪急梅田本店

阪急梅田本店を運営する株式会社阪急阪神百貨店では、コロナ禍による来客の減少を補うために、メタバースにショッピングサイトを開設しました。

メタバースでの集客に力を入れた結果、地元である関西のみならず、中国や韓国からも問い合わせが入るようになりました。

大日本印刷株式会社(DNP)

大日本印刷株式会社では、VR(仮想現実)を用いたプレゼンテーション技術の開発をしています。大日本印刷が開発するVRは本物に近い臨場感を得られるため、住宅の内見やインテリアの販促に適しています。

凸版印刷株式会社

凸版印刷では、メタバース空間やアバターの開発に取り組んでいます。

色彩や印刷の基盤技術を保有しているため、アートや医療など正確な色彩が求められる分野で強みを発揮します。
一例として、メタバース上で美術品の鑑賞ができるバーチャル美術館「MiraVerseミュージアム」を手掛けました。

キヤノン株式会社

キヤノン株式会社は、メタバースプラットフォーム「Kokomo」の開発を進めています。
このKokomoの特徴は、現実世界の映像をリアルなまま相手に届けられる点です。
キヤノンのカメラと「kokomo」の組み合わせにより、実際にその場にいるような臨場感を演出します。

ソニー株式会社

ソニー株式会社は「メタバース」が次なるトレンドになると予想し、エンターテイメント分野での展開を進めています。
具体的な活用方法が、ゲームやスポーツ観戦です。
例えば、サッカーのライブ中継ではさまざまな角度から観戦できるなど、没入感のある体験を目指しています。

株式会社リコー

株式会社リコーはベンチャー企業と協力し、「リコーバーチャルワークプレイス」を開発しました。
リコーバーチャルワークプレイスは、ビジネス向けのバーチャルオフィスです。
遠方にいる参加者と共に働けるほか、3D模型を共有しながら議論ができます。

例えば建設業の場合、建築物の立体モデルを見ながら工事計画の話し合いができます。
この他にも、リコーは3Dホログラムを投影できる装置「WARPE(ワープイー)」を開発するなど、メタバースに注力しています。

パナソニック株式会社

パナソニック株式会社の子会社「株式会社Shiftall」では、VRゴーグルの商品化を進めています。
VRゴーグル「MeganeX(メガーヌエックス)」は既存のVRヘッドセットよりも軽く、鮮明な映像を描写できます。
ほかにも、メタバース専用のマイク「mutalk(ミュートーク)」やヘッドセット「WEAR SPACE」など、ユニークな商品を世に送り出しました。

株式会社KDDI

株式会社KDDIは、実在する都市と連動したメタバース空間「バーチャル渋谷」を仕掛けました。
このバーチャル渋谷の特徴は、参加者も主体的に活動できる点です。
イベントを行ったり商品を販売したりと、参加者も市民の一人として自由に振る舞えます。

NTTドコモ株式会社

NTTドコモ株式会社では、自由にコミュニケーションできるメタバース空間「XR World」をリリースしました。
XR Worldの空間内では、音楽やアニメなどのコンテンツを楽しめます。
参加者同士がコミュニケーションを取りながら、同じコンテンツを共有できる点が魅力です。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、メタバース空間内に店舗展開を進めています。
メタバースプラットフォーム「ZEPETO(ゼペット)」にはソフトバンクのオンラインショップが開設され、アバター店員による接客を受けられます。
従来の接客は、実店舗やコールセンターが主流でした。
ソフトバンクでは新たな顧客との接点の場として、メタバース上の店舗に力を入れています。

セガ株式会社

セガ株式会社の関連会社「株式会社セガ エックスディー」では、3Dアバターの製作システム「SHUN‘X」を開発しました。

このSHUN‘Xは人間一人が入れるほどの大きさであり、全身を隅々までスキャンできます。
読み取ったデータは3D化され、瞬時に自分のアバターを製作できます。
メタバースゲームに自身のアバターを登場させることも可能であり、今後の展開が期待される技術です。

ベンチャー/スタートアップ

クラスター株式会社

クラスター株式会社とは、国内最大級のメタバースプラットフォーム「Cluster」を運営する企業です。
「Cluster」の特徴は、誰にとっても使いやすい点です。操作が簡単で、初めての人でも迷うことなくメタバースでの体験ができます。

クラスターでは、渋谷や天王寺といった現実世界の都市とコラボにより、現実とメタバースを連携させる取り組みに注力しています。

株式会社Gugenka

株式会社Gugenkaは、メタバースに不可欠なアバターの製作に力を入れています。
誰もが簡単にアバターを作れるアプリ「Make avater」など、ユーザーが自分好みのアバターを作れる点が魅力です。

Gugenkaは、日本のアニメコンテンツとのコラボレーションにも力を入れています。
アニメのイベントをきっかけとして、メタバースに興味のなかった新規ユーザーの獲得に成功しています。

その他

日本メタバース協会

日本メタバース協会は、国内におけるメタバースの普及やビジネス環境の整備を目指す団体です。
主に、メタバースやブロックチェーンに関する啓蒙活動や勉強会を主催しています。

エバンジェリスト

バーチャル美少女ねむ

バーチャル美少女ねむは、個人で活動するVtuberです。
歌手や作家としての活動に加えて、メタバース文化の啓蒙に努めています。

バーチャル美少女ねむは自身を「メタバース文化エバンジェリスト」と名乗り、メディアやインターネットを通じてメタバースのトレンドを紹介しています。

従来のVtuberは、YouTubeのような2Dの画面で映像を発信していました。
しかし、メタバースの普及につれて、3Dの立体映像でユーザーと共に楽しむスタイルが確立されようとしています。

国外でメタバース事業に参入している企業・組織

大手テック企業

Meta

2021年10月に、Facebook社は社名を「Meta」に変更しました。
この社名変更が示す通り、Metaは今後、メタバース事業に本格的に注力していきます。

Metaは、メタバースプラットフォームの開発に力を入れているほか、「Meta Quest」のようなデバイスも販売しています。
特に労働環境への展開を視野に入れている点が特徴です。

大手ファッションブランド

NIKE(ナイキ)

NIKE(ナイキ)は、バーチャルスニーカーのブランドである「RTFKT(アーティファクト)」を買収しました。
このRTFKTは、3Dモデルのスニーカーを専門にデザインする企業です。

ほかにもNIKEは、メタバース・スタジオ(Metaverse Studio)というVR研究所を新設するなど、メタバース参入に向けた動きを本格化させています。

adidas(アディダス)

ナイキの競合であるadidas(アディダス)も、メタバースへの取り組みを加速させています。
3DモデリングされたNFTを販売したほか、メタバース上の土地も購入しました。

adidasの特徴は、コミュニティを積極的に形成している点です。
メタバースの世界では、人々の交流が重要となります。
adidasでは早い段階からファンの交流を促進し、コミュニティの立ち上げに成功しました。

メタバースプラットフォーム

VRChat Inc.

VRChat Inc.は、メタバース空間「VRChat」の開発を手掛けるアメリカの企業です。

VRChatは2014年にリリースされており、長い歴史を持つプラットフォームです。
VR Chatは、メタバースプラットフォームの先駆けとして確固たる地位を確立しています。
そのため、多くの企業がVR Chatをベースにメタバース開発を進めています。

Animoca Brands(アニモカ・ブランズ)

Animoca Brandsは、大手メタバースプラットフォーム「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」の親会社です。
メタバース系のゲームやNFTゲームのスタートアップにも積極的に投資をしています。

Decentraland Foundation

Decentraland Foundationは、人気メタバースゲーム「Decentraland(ディセントラランド)」の開発団体です。
アディダスやサムスンといったグローバル企業がDecentralandの土地を購入したため、大きな注目を集めました。

日本の仮想通貨取引所「Coincheck」との提携もしており、「Oasis KYOTO(オアシス 京都)」というプロジェクトを推進中です。

まとめ

いまだに、メタバースの活用方法について正攻法は見出されていません。
そのため各社が、自社ビジネスへの応用の仕方を模索している段階です。
また、今後メタバースが多くの人に普及するにつれて、新たなビジネスチャンスも生まれるでしょう。

今回紹介した事例を参考に、メタバースでの事業展開を考えてみてください。 

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