WEB3やNFTの基盤となる技術であり、その文脈上で語られることが多いブロックチェーン。
仮想通貨「ビットコイン」を支える技術として開発され、高い改ざん耐性が特徴だが、ブロックチェーンそのものの課題について十分に議論されているとは言い難い。
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学領域 教授の笠原正治氏は2014年頃からブロックチェーンの研究を始め、専門である待ち行列理論を用いてビットコインの仕組みをモデル化した人物だ。
ブロックチェーンの現状や今後乗り越えるべき課題について笠原氏が語った。
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学領域 教授の笠原正治氏
―まず、笠原先生がお考えになるブロックチェーンの定義を教えてください。
私のイメージでは、ブロックチェーンといえばビットコインで始まったパブリック型のブロックチェーン、いわゆるパーミッションレス(自由参加型)ブロックチェーンのことを指します。
不特定多数の管理ノードで構成されている状況下において各参加者が同じ台帳を管理・共有する分散型台帳技術を用い、そこで管理されている情報が一切改ざんされない。
これがブロックチェーン以前とブロックチェーン以後で劇的に変化したところです。
パブリック型のブロックチェーンは透明性が高くスケーラビリティに欠けており、この点を改善する目的でプライベート型のブロックチェーンが登場しました。
ビジネスの世界では現在このプライベート型のブロックチェーンが主流になっていると感じます。
―最近のブロックチェーン関連市場の盛り上がりについてどのような印象をお持ちですか?
これまで仮想通貨に特化していた技術が、いよいよアプリケーションに下りてきたという印象です。
今後のビジネスや技術が目指す方向性が、ブロックチェーンをベースにした分散型のインターネットサービスであることは間違いないでしょう。
一方で今のところ目を見張るようなブレイクスルーがあるわけではなく、今後の展開はブロックチェーンがどのようにして技術的な発展を遂げるかが鍵になります。
私が考えるキーワードの1つが「インターオペラビリティ(相互運用性)」です。
異なるブロックチェーン同士が信頼のおける形で連携し合うことが、今後ますます重要になってくるでしょう。
―インターオペラビリティの例を教えてください。
例えばビットコインのブロックチェーンとイーサリアムのブロックチェーンは異なるブロックチェーン同士ですが、「スマートコントラクト」という技術を用いて相互に通貨を送金し合うことが可能です。
これがインターオペラビリティです。
「Nishikigoi NFT」で知られる山古志村のDAO(分散型自律組織)は、ある意味閉鎖的な組織です。
プロジェクトに賛同する人たちがガバナンストークンを投票権として利用し、プロジェクト内で意思決定を行っているわけですが、ほかの場所に山古志村とは異なるDAOが立ち上がった際に現段階ではトークンを相互に行き来させる方法がありません。
複数のDAOで情報や価値観を共有するには、それぞれのDAO内で流通しているトークン同士をうまく連携させる仕組みが必要です。
そのため、今後はスマートコントラクトのような異なるブロックチェーン同士を連携させる新しい技術が求められるようになるでしょう。
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