DAOの社会実装へ!ガイアックスが挑むweb3時代のファンコミュニティとは

web3プロジェクトの多くは、DAO(※1)を中核として運営されている。このDAOでは世界中から有志が匿名で参加できる上に、トークンを介した報酬の受け渡しも可能だ。加えて、共通の目的を持った者同士が集結しているため、参加者たちの熱量によってコミュニティが急速に発展してゆく。今やweb3を語る上で欠かせないくらいに、DAOは大きな盛り上がりを見せているのだ。

しかし、このようなDAOの活況ぶりはweb3の関係者に限定されており、一般ユーザーにはそれほど浸透していない。ブロックチェーン特有の難しさがハードルとなり、多くの人はまだ参入していないのが現状だ。このような状況の中でDAOを広く社会に普及すべく、企業や自治体のDAO導入を支援している企業がある。株式会社ガイアックス(東京都千代田区)だ。このガイアックスで注目すべきは、DAOのコミュニティ設計やコンサルティングを一手に担っている点。実際に、ガイアックスが手掛けたDAOはシェアハウスや町おこしの現場で活用されており、活発なメンバー交流に寄与している。

※1 DAO(Decentralized Autonomous Organization)・・・分散型自律組織を指す。企業組織のような指揮命令系統はなく、有志の自発的な活動によって支えられているコミュニティ。スマートコントラクトによって、組織の秩序が維持されている。

しかし、DAOの立ち上げや運営は容易ではない。参加者たちが集い、自発的に貢献したくなるような組織設計ができなれば、コミュニティは求心力を失い自然消滅してしまうからだ。一体どのようにして、ガイアックスはDAOの支援事業を確立するに至ったのか。この事業を通じて、ガイアックスはどのようなビジョンを実現しようというのか。

今回は、同社のweb3事業本部・コンサルティング責任者 廣渡 裕介氏へDAOの支援事業を中心として、以下の項目について聞いた。

  • 従来型のファンコミュニティにはない「DAOならではの可能性」
  • 企業や自治体にDAOを導入する上での課題点
  • DAOの制度設計を考える上で欠かせないポイント

web3におけるコミュニティ文化に興味を持つ読者にとって、実社会でのDAOの実装に向けた大きなヒントを得られるであろう。

スタートアップで経験した資金調達がガイアックス参画のきっかけに

株式会社ガイアックス web3事業本部・コンサルティング責任者 廣渡 裕介氏

ーまず株式会社ガイアックスにおけるweb3事業本部の事業内容について、お聞かせください。

廣渡氏:web3事業本部では、DAOの普及・推進を事業の柱にしています。具体的には、以下の取り組みを進めています。

  • 社内でのDAO組成、DAOに関する研究・開発
  • 企業、自治体に対するDAO運営の支援、コンサルティング

実際にガイアックスでは、シェアハウスやNPO法人に対してDAOの導入を支援した実績があります。この他にも、地方自治体と連携してDAOを通じた町おこしにも参画しています。

ー廣渡様の役割について、お聞かせください。

廣渡氏:私はweb3事業本部でDAOコンサルティングチームの責任者をしています。企業や自治体へDAOを導入するために、ヒアリングからDAOの制度設計、コミュニティの運営支援まで幅広く担当しています。

またガイアックスでの職務に加えて、一人の起業家としてスタートアップを経営する立場でもあります。

ー廣渡様は、どのような経緯で株式会社ガイアックスでのDAO事業に参画したのでしょうか。

廣渡氏:スタートアップで資金調達に奔走した経験が、ガイアックスに参画するきっかけとなりました。

私がスタートアップを起業した際に、まず資金調達をしなければなりませんでした。出資者を探す過程で、スタートアップの支援事業を手掛けていたガイアックスとの接点が生まれたのです。ここでの縁が発端となり、私はガイアックスのスタートアップスタジオで起業家の支援に携わりました。ちょうど2年ほどのキャリアを過ごす中で、社内でweb3やDAOに関する事業部が立ち上がり、現在のweb3事業本部へ移籍しました。

世の中へDAOを普及させて、人と人をつなげる

ー株式会社ガイアックスが展開するDAOコンサルティングサービスについて、お聞かせください。

廣渡氏:DAOコンサルティングサービスとは、クライアントにおけるDAOの立ち上げを支援する事業です。コンサルティングの内容は、上流から中流、下流の3段階により構成されています。

まず上流として実施するのが、クライアントに対するヒアリングです。保有する資産やステークホルダーの種類を分析し、企業が抱える課題を洗い出します。その上でDAOを正常に機能させるために、企業ごとのインセンティブ設計を描くのです。

次に、中流の工程ではコミュニティ運営に携わり、DAOに対する求心力を高めます。DAOを自走させるにあたって、コミュニティから湧き上がる熱量が欠かせません。そこで複数人の火付け役を起用して、DAO内での交流を活性化させるのです。

最後は下流での支援です。各クライアントごとに設計されたビジネスモデルを実現すべく、スマートコントラクトの実装や機能設計を行います。ガイアックスにはエンジニア人材も在籍しているため、顧客ごとに最適化されたプラットフォームを開発できるのです。

ガイアックスでは、これらのコンサルティングサービスを一定の期間に限定して提供しています。コンサルティングの期間は、一般的に約6ヶ月間です。DAOの最終的なゴールとして、コミュニティの権限を分散化させなければなりません。そのため、ガイアックスでは6ヶ月間でのコミュニティ自走を目指し、完了後はDAOに対して権限を移譲しているのです。

ー株式会社ガイアックスでは、なぜDAOを中心とした事業へ取り組むこととなったのでしょうか。

廣渡氏:ガイアックスの根幹である「人と人をつなげる」ビジネスと、DAOとの相性が良いためです。

1999年の創業以来、ガイアックスは「インターネット上で人と人をつなげる」というミッションを掲げて、ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーの事業を展開してきました。そのような中で、2015年からブロックチェーンの可能性に着目し、web3やDAOに関する研究を進めてきたのです。一見するとweb3事業は異色のビジネスと思われるかもしれませんが、ガイアックスの「人と人をつなげる」という軸に一致しているのです。

またガイアックスの組織風土も、DAOに取り組む要因のひとつでしょう。ガイアックスには、「フリー・フラット・オープン」なカルチャーが存在します。このようなガイアックスの社風はDAOとの相性が良く、DAOの将来性に大きな可能性を感じているのです。

ーDAOが持つ可能性について、株式会社ガイアックスではどのように捉えていますか。

廣渡氏:DAOの魅力は、トークンエコノミクスを導入できる点です。これにより、ファンマーケティングにおいて重要な「インセンティブ設計」の効率化と最大化を実現できるのです。

ファンマーケティングでは、参加者による「自発的な貢献」が欠かせません。この原則は、web2やweb3を問わず普遍です。ただし、web2型のファンマーケティングとDAOの違いは、参加者の貢献度に応じてリワード(報奨)を付与できるか否かにあります。DAOを導入すれば、リワードを介して参加者のモチベーションを維持できるのです。

また、トークンにユーティリティやガバナンス等の機能を付属させることにより、モチベーションを向上させるギミックも魅力です。保有トークン自体は2次流通が可能なので、キャピタルゲインを狙うこともできます。ホルダー全員が価値向上に向かって能動的に動くのは自然な行動です。

ガイアックスでは、長年にわたりファンマーケティングの事業にも携わってきました。これまでに培ったノウハウを活かして、DAOならではのインセンティブ設計を目指しています。

ーDAOのコンサルティングサービスについて、導入事例をお聞かせください。

廣渡氏:非公開の事例も含めて、既に10案件を超えるDAOの組成に携わりました。代表事例は、以下の2つのDAOです。

  • 「Roopt神楽坂 DAO」・・・DAO型のシェアハウス運営プロジェクト。入居者と出資者がDAOを介して、シェアハウスの運営に関与する。
  • 「美しい村DAO」・・・DAOを通じた地方創生プロジェクト。地域住民と出資者であるデジタル村民が、共同で地域の課題解決に関与する。

この他に、法人顧客に対してDAOの組成サポートを行っています。現状では社内向けのDAOが多いものの、どの企業も将来的には自社の顧客を巻き込んだコミュニティ運営を目指しているようです。

クライアントの反応も上々です。「DAOに関する定例ミーティングが待ち遠しい」との反響も届いており、DAOの内部から熱量が生まれてきています。

ーほとんどの企業は、DAOに関する十分な知見を持ちません。そのような状況の中で、どのようにしてDAOのコンサルティング提案を行っているのでしょうか。

廣渡氏:DAOへの理解を深めてもらう目的で、ガイアックスではクライアントに対する研修サービスを提供しています。そのため、顧客がweb3に関する知識を持たない状態であっても問題ないのです。

研修サービスを受講している企業の目的は、主に次の2パターンが挙げられます。ひとつは、「ゼロからweb3を学びたい」というニーズです。行政の成長戦略でもweb3が取り上げられたため、自治体や民間企業を問わず多くの組織がweb3に関心を抱くようになりました。このような組織に対して、DAOの特徴を初歩からわかりやすく解説しています。

もう一つのパターンが、DAO導入を前提としたコンサルティング目的の研修です。経営陣の指示でweb3に取り組んでいるものの、実働部隊に十分な知見がないというケースも珍しくありません。このような企業に対して、DAOの可能性や用途を説明しています。ただ、DAOの導入自体が目的となっては本末転倒です。そこでガイアックスでは、研修を通じてクライアントが抱える問題点を分析し、DAOの導入が本質的な課題解決に繋がるのかをコンサルタントの視点から診断しています。

このようにDAOの研修サービスを設けているため、クライアントにweb3の知見がない場合でも問題なくコンサルティングができるのです。

ー実際に複数のDAO運営に携わってみて、どのような感想を抱いたかお聞かせください。

廣渡氏:DAOを企業に浸透させるには、長い期間を要すると実感しました。DAOの魅力を実感してもらうには、実際に時間をかけて体験してもらう必要があるからです。また、セキュリティ管理など企業ならではの課題もあります。たとえば、民間企業ではセキュリティの観点から、Discordやメタマスクを気軽にインストールできません。

企業や公官庁へDAOを浸透させるには、時間をかけてこれらの課題に向き合っていく必要があると感じました。

「バーニングニーズ」がDAOの発展を加速させる

ーDAOは、どのような種類のコミュニティと相性が良いとお考えですか。

 

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