NFT技術はアート分野との相性が良い。実際に、2021年頃からアメリカ人のアーティスト「Beeple」を筆頭としてさまざまな作品が登場した。デジタルアートにNFT技術を導入すると、オリジナルの作品となるため希少価値を付与できる。インターネットを通じて自由な取引が可能であり、アートの新たなあり方として期待されているのだ。
このような「アート×NFT」の文脈で、日本の文化財を後世に継承しようと取り組む企業が存在する。セレクトショップ大手であるビームスにおいて、広告やプロモーション戦略を手掛けている企業「株式会社ビームスクリエイティブ(東京都渋谷区)」だ。同社は日本の良さやおもしろさを発信する「BEAMS JAPAN」の取り組みの一環として、「文化財×NFT」という組み合わせの企画を実現させた。
このプロジェクトを率いるのが、事業開発3部の部長 鈴木春幸氏だ。鈴木氏は、「BEAMS JAPAN GATE STORE プロジェクト」を立ち上げ、日本各地の名所・景勝地で地域共創型の出店をしてきた人物である。出雲(島根)と日光(栃木)の常設店舗に加えて、これまでに宮島(広島)、伊勢(三重)、西本願寺(京都)、善光寺(長野)といった観光地において、期間限定でストアを展開してきた実績がある。
そして、2023年9月には3ヶ月限定で、長野県の善光寺の境内にある授与品所にて「ビームス ジャパン 善光寺」を出店したのだ。この店舗で発売されたのが、ハードウェアウォレット搭載のお賽銭入れ「善光寺 スペシャルウォレット」だ。このお賽銭入れを購入すると、専用サイトから善光寺のシンボルである「鳩字の額」のNFTを入手できる。また、収益の一部が善光寺に還元されて、文化財の補修費用に充てられるという。つまり、善光寺の文化財保護に役立てられるのだ。文化財を後世に継承する目的でNFTが活用された。果たして、どのような経緯で「文化財×NFT」の企画が生まれたのか。
今回はビームスクリエイティブの事業開発3部で部長を務める鈴木氏へ、同社の「BEAMS JAPAN GATE STORE プロジェクト」を中心として、以下の項目について聞いた。
ビームスクリエイティブは、日本の魅力を国内外へ発信しようと取り組んでいる。このような活動において、NFTのどのような側面に期待を寄せているのか。自社のビジネスにブロックチェーンを導入するにあたって、ビームスクリエイティブの施策から多くのヒントを得られるであろう。
ーまず、株式会社ビームス クリエイティブの事業概要について、お聞かせください。
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