トレードログが示す、サプライチェーン分野におけるブロックチェーン活用の可能性─産業分野でのIoT活用との親和性を知る

ブロックチェーンといえば仮想通貨をはじめとした金融分野での活用が真っ先に思い浮かぶのではないだろうか。しかし、ブロックチェーン技術が活用可能な領域は金融分野だけではない。実は非常に幅広い分野での活用が可能となっている。

その1つの例を示すのが、製造・物流・小売・社会インフラ・農業など主にIoTを活用する各事業領域に対してブロックチェーン技術の活用を支援するトレードログ株式会社である。

そこで今回は同社の代表取締役である藤田 誠広氏に、創業に至った背景や、産業分野でのブロックチェーン技術活用のあり方などについて話を聞いた。

従来ながらのブランドマーケティング手法に限界を感じ、サプライチェーン領域にブロックチェーンを活用すべく起業へ

トレードログ株式会社 代表取締役 藤田 誠広氏

──御社はブロックチェーンを仮想通貨以外の実体経済の領域に活用しているのが特徴的ですが、改めて事業内容についてご紹介ください。

当社は、製造・物流・小売・社会インフラ・農業などの主にIoTを活用する各事業領域に対して秘匿型ブロックチェーン技術の導入支援とデータ活用支援を行っています。
例えば、各種真贋証明や
製品ライフサイクルの可視化などといったように、サプライチェーンに関わる領域を中心にブロックチェーンを活用することをお手伝いしています。こうした取組はシステム開発の枠を超えて従来のビジネスモデルの刷新を目指すものですから、当社は自らを“ビジネスモデル変革支援会社”と呼んでいます。

──そうした事業を生業とする会社を2018年に創業された背景や、今の事業を開始するに至った経緯を教えて下さい。

もともと私はマーケティングリサーチや各種コンサルティングサービスを手掛ける会社に勤めていました。なかでも特に大手のブランド企業をクライアントとしてマーケティング支援をしていたのですが、やがて従来のマーケティング手法に限界を感じるようになりました。

従来のブランディング施策というのは、顧客に対してあまり多くの情報を公開せずに、“実態が伴っているかどうかはわからないけれども、なんとなく良いイメージ”を抱いてもらう……そんなアプローチが中心でした。しかしそれだけでは、情報が氾濫し消費者の意識も高くなってきているこれからの時代に十分な効果を発揮できないのではないかという懸念が強まっていきました。

その後、会社全体のDXにかかわる部門に所属することとなったのですが、そこでは「データを連携させること」と「データを可視化すること」の難しさと重要性を改めて実感することとなりました。テレビの視聴率調査をメインビジネスとする会社でしたので、例えば視聴度合いに応じて適切なデジタル広告を配信するセグメントを開発したり、テレビCMのスコアの精緻な予測に取り組んだりと、デジタルの強みを既存事業に活かせないかと試行錯誤していました。

そんな折に海外に目を向けると、既にサプライチェーンの領域においてもブロックチェーンの導入検討が進んでいることを知りました。例えば、意識の高い消費者への説明責任を果たすのに使えないだろうか、貿易実務の合理化に使えないだろうか、といった具合です。「自分もこの技術を用いてブランドコミュニケーションの新しいあり方を支援できないだろうか」という思いが強まっていき、企業と企業、あるいは企業と消費者をまたいでの情報のやり取りにフォーカスしたビジネスを実践したいと、一からの創業へと踏み切ったのです。

──事業が軌道に乗るまでどのような点に苦労しましたか。

やはり創業からしばらくの間はいろいろとハードルが待ち構えていましたね。資金繰り、人材集め、パートナー企業探しなど、いろいろ苦労しましたし、こういった苦労は今後も続くだろうとは思っています。創業時にフォーカスすると、やはり顧客を集めるのに苦労しました。

創業時にはいくつかのプロダクトアイディアがあったのですが、次々に頓挫して資金がなくなっていきました。その際、この会社は改めて「何のために存在する会社なのか」と考え直しました。

例えば、もし自分が仮想通貨取引をしたいとして、金融業界変革への熱い情熱を持った加納さんが作ったビットフライヤーと、自分のように金融業界でのキャリアも思い入れもない人間が作った取引所でどちらを使うか?少なくとも自分であればビットフライヤーを選ぶと思いました。同様に、ごくたまにオンライン将棋くらいしかやらない自分が作ったブロックチェーンゲームで遊ぶ奴は間違いなくいないと確信が持てる。あるいは、IPを持っている企業であれば自分ではなく博報堂の伊藤さんに相談するはずだ。そうやって片っ端から消去法で事業テーマを選んでいった中で、自分達の強みを活かせて、かつ飽きずに続けられそうな領域を探していった結果、非金融・非コンテンツ、中でもIoTを活用する領域だろうと決めました。

こうした立ち位置を決めた結果、八千代エンジニヤリング様、ブリヂストンソフトウェア様など、徐々に製造や社会インフラといった領域のお客様と出会えるようになってきました。

社外リソースも活用し、個々のプロジェクトに応じて最適なチームを編成

──主に非金融領域向けにブロックチェーン技術導入の支援を手掛けられていますが、この領域に特化し事業推進すると決めて感じられたことと、現在はどのような組織体制で活動しているのか教えてください。

 

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