Web3プロジェクトの成否を左右する要因が、コミュニティの熱量だ。コミュニティに集まったメンバーが自発的に貢献すれば、プロジェクトに大きな盛り上がりが生まれるからだ。この参加者たちの勢いはコミュニティの外まで波及し、新たな参加者を呼び寄せる。
そのため、プロジェクトの運営者はメンバーと積極的に交流し、コミュニティ全体を活性化させなければならない。とはいえ、Web3プロジェクトはどこも小規模で活動しているため、コミュニティ運営に充分な人的リソースを捻出することは困難である。
このような中で、Web3におけるコミュニティ運営やセールス業務の自動化プラットフォームを提供するスタートアップが登場した。IT分野でのオートメーション(自動化)を得意とする「株式会社サンカ(東京都江東区)」だ。株式会社サンカが提供する「Sanka for web3マーケティング」では、コミュニティ上での問い合わせ対応やSNSでのPR活動を自動化できる。加えて、ブロックチェーンに記録された取引データの分析も可能だ。
要するに、Sankaのプロダクトを活用すれば、少人数でも効率的にWeb3プロジェクトを推進できるのだ。
この株式会社サンカでCEOを務める人物が、金 海寛(キム・ヘガン)氏である。前職ではキャッシュレス決済サービスや暗号資産取引所で事業開拓に携わった経験を持つなど、ITや金融の分野におけるサービス展開を得意としている。
Sankaについて驚くべき点は、Web2、Web3の双方の領域に向けて事業を推し進めていることだ。一般的なWeb3スタートアップの場合、人的なリソースが不足している。そのため、ブロックチェーン分野のみに専念しているケースが多い。これに対してサンカでは、事業領域をWeb3だけに限定しているわけではないのだという。果たしてこの戦略には、どのような意図があるのか。
今回は、同社の CEO 金 海寛(キム・ヘガン)氏へ株式会社サンカの自動化プラットフォームを中心として、以下の項目について聞いた。
移り変わりが激しいWeb3の世界では、将来を見通すことは難しい。Web3ビジネスに挑戦している読者も、将来的な事業の方向性に不安を抱えているだろう。Sankaが推し進める事業戦略は、読者にとっても大きなヒントとなるはずだ。
目次
株式会社サンカ CEO 金 海寛(キム・ヘガン)氏
ーまず、株式会社サンカの事業内容について、お聞かせください。
金氏:Sankaは、AIやオートメーション(自動化)によって業務の効率化を実現する会社です。マーケティングや採用活動、経理など、幅広い業種での効率化が可能です。
例えば、以下のタスクをワンクリックで実行できます。
このように、Sankaでは自動化プラットフォームを駆使してクライアントの生産性向上に貢献します。
ー株式会社サンカの組織体制について、お聞かせください。
金氏:2023年6月時点で、6名が在籍しています。私も含め、基本全員が開発メンバーです。
CEOである私がフロント業務やマーケティングも兼任しています。Sankaの自動化プラットフォームは、Web2、Web3の双方に対応しなければなりません。開発業務に人的リソースがかかるため、エンジニアが多く所属しています。
ー株式会社サンカの経営理念について、教えてください。
金氏:Sankaの掲げるミッションステートメントが、「より少ない時間で、より大きな成果を。」です。
人類は、数々のイノベーションを通して効率化を実現してきました。例えば、大昔は東京から大阪まで徒歩で移動するしかなかったのです。しかし文明の発達とともに、馬による伝馬制や鉄道網が登場し、より早く、より快適に移動できる環境が実現しました。
私は、このような技術革新をソフトウェアの領域で推し進めたいと考えて、Sankaの経営理念を定めました。
ー金様の社内での役割について、お聞かせください。
金氏:私は、Sankaの創業者兼CEOです。自動化サービスを展開するにあたって、主にフロント業務やマーケティング、製品設計を指揮しています。
ー株式会社サンカを創業するまでの金様のご経歴について、お聞かせください。
金氏:Sankaを創業する以前に、私は決済インフラの企業でキャリアを形成してきました。
学生時代は、イギリスで社会学を学びました。この留学の期間中に一時休学をして、世界中を旅していたのです。旅の途中で立ち寄ったシリコンバレーでは、ブログやSNSなどITサービスの台頭を目の当たりにしました。
そこで大学を中退し、友人と共にIT系ビジネスの起業に挑戦したのです。残念ながら、この事業自体は頓挫してしまったものの、スタートアップ経営で培った技術や人脈がきっかけとなり、IT系の企業からヘッドハントされました。その後、Square、Revolut、Coinbaseなど、グローバル企業が日本に進出する際の市場開拓に携わりました。
2023年1月にCoinbaseが日本市場からの撤退を発表したのですが、この撤退を機に自身で新規事業を立ち上げたいと思い、株式会社サンカを創業しました。当初はコミュニティ運用ツールの開発をしていたものの、自動化に対するニーズが数多く寄せられたため、ビジネス全般に対応した自動化プラットフォームが主力事業となりました。
ー金様は、どのようなきっかけでブロックチェーンに関心を抱かれたのでしょうか。
金氏:決済インフラの企業に務めていたことがきっかけで、2015年くらいからブロックチェーンに興味を持っていました。
私は、以前にSquare(スクエア)という決済サービスの会社に勤務していました。このSquareで当時CEOを務めていた人物が、ジャック・ドーシー氏(※1)です。ジャック・ドーシー氏の方針により、Square社内でもブロックチェーンの商用化に向けた検討が進められていました。
このような環境にいたため、私もクリプトに興味を持つようになったのです。SquareやRevolutでのキャリアを通じて、「いつかブロックチェーンに携わりたい」との思いが私の中に生まれました。そして、ちょうどコインベースよりスカウトも来ていたため、ブロックチェーン業界への挑戦を決意したのです。
※1 ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)・・・Square社やTwitter社を創業した起業家。ビットコインの熱心な支持者として知られる人物。
ー株式会社サンカが提供するWeb3向けマーケティングソリューション「Sanka for web3マーケティング」について、サービスの概要を教えてください。
金氏:Sanka for web3マーケティングは、Web3におけるコミュニティ運営やセールスを支援するプロダクトです。Sankaのオートメーション技術を駆使して、マーケターやコミュニティマネージャーが抱える業務の効率化を実現します。具体的には、以下のタスクが可能です。
これらの機能をパッケージ化し、マーケティングソリューションとして提案しています。
ーなぜ、Web3におけるコミュニティマネージャー業務を効率化しようと思いついたのでしょうか。
金氏:Web3プロジェクトの関係者と交流する中で、コミュニティマネージャー業務に課題を抱えていると確信したためです。
Coinbaseでの仕事を通じて、さまざまなWeb3関係者と交流してきました。その時に感じた課題が、「コミュニティマネージャーの大変さ」です。コミュニティマネージャーは、テレグラムやDiscord、SNSなど幅広いツールを駆使して発信活動を続けなければなりません。この発信活動が、Web3プロジェクトの運営者にとって大きな負担となっていました。
加えて、多くの国内プロジェクトでは、海外進出に向けたマーケティング戦略に悩んでいたのです。実際に、Coinbaseでのマーケティング経験を持つ私の元には、数々の相談が寄せられていました。
このような経験を通じて、コミュニティマネージャーに対するマーケティング支援には大きなニーズがあると実感したのです。そのため、「Web3のマーケティングソリューション」という形でWeb3事業を展開するに至りました。
ーWeb3における自動化ツールの提供だけでなく、コンサルティングのような立場からコミュニティ運営をサポートしているのですね。
金氏:そうですね。現状のWeb3市場では、「そもそもコミュニティ運営の方法や必要性がわからない」という企業様も多く存在します。このような状況では、Sankaの自動化ツールを使ってもらえません。
そこでWeb3コミュニティの黎明期である現時点では、コンサルティングやコミュニティ運営のサポートも請け負っています。実際に国内のNFTプロジェクトやGameFiプロジェクトをご支援する際は、以下の業務をサポートしました。
このように、Web3マーケティングの基礎となる、コミュニティの運営支援サービスを幅広く提供しています。
ー「Sanka for web3マーケティング」について、どのような顧客をターゲットにしているのでしょうか。
金氏:想定しているターゲット顧客は、主にNFTプロジェクト、DeFiプロジェクト、GameFiプロジェクトの三つです。
いずれの組織でもコミュニティ運用が重要視されるため、Sanka for web3マーケティングの強みを発揮できると考えています。
ー自動化プラットフォーム「Sanka」について、株式会社サンカではWeb2、Web3の双方の領域に対してサービスを提供しています。もともとWeb2用に開発したサービスを、Web3向けに水平展開したのでしょうか。
「NFT×写真」のゲーム!GALLUSYSのSNPIT(スナップイット)とは?
NFTによる参加型の街づくり!東急の「SHIBUYA Q DAO」とは?
商業利用できる!ディー・エル・イーのWeb3プロジェクト「鷹の爪団NFT」とは?
日本発のブロックチェーン!Astar Foundationがアジア市場に注力する理由とは?
Web3と規制・政策の「いま」と「これから」 元当局者・クエストリー内田氏が読み解く国家戦略の行方
レイヤー2「INTMAX」とは?真の金融インフラを開発する日置玲於奈氏の展望に迫る
ログイン
新規登録(無料)