ブロックチェーンの真髄は、「スマートコントラクト」にこそ存在する。スマートコントラクトとは、プログラムによってデジタル通貨の送金と商取引を同時に完了させる仕組みだ。即時決済が可能であり、信用リスクも存在しない。
しかしビジネスに革新をもたらす技術であるにも関わらず、日常生活での実用化にはまだ至っていない。なぜならインフラの整備や法的な位置づけなど、多くの課題が山積しているからだ。加えてWeb3の潮流は刻々と変化するため、迅速な意思決定が求められる。機動的な対処がしづらい大企業にとって、Web3事業への参入は容易ではない。ましてや厳格な法令対応が求められる金融の世界では、ブロックチェーンの導入は困難を極める。
こうした中で、金融最大手の三菱UFJ信託銀行株式会社(東京都千代田区)では、大胆な推進体制によってブロックチェーンを用いたデジタルアセット事業を推し進めている。デジタルアセット事業の先駆けとして開拓している不動産トークン市場は、430億円を超える規模の案件が発行・販売済みであるなど、新たな投資家層の取り込みにも成功した。
変革が起こりにくいと言われる金融業界において、三菱UFJ信託銀行はいかにしてWeb3に根差したイノベーションに取り組んでいるのか。この成功の影には大企業の社員でありながら、一人の起業家としてWeb3事業に取り組む人物の存在があった。
今回はブロックチェーン事業に挑んでいる三菱UFJ信託銀行株式会社 デジタル企画部 デジタルアセット事業室のプロダクトマネージャー 齊藤 達哉氏に聞いた。
三菱UFJ信託銀行株式会社 デジタル企画部デジタルアセット事業室
プロダクトマネージャー 齊藤 達哉氏
ーまず、三菱UFJ信託銀行におけるデジタル企画部の役割について、お聞かせください。
齊藤氏:デジタル企画部は、三菱UFJ信託銀行のDX化を全般的に主導する部署です。既存業務の単なるデジタル化に留まらず、デジタルを駆使した新しいビジネスモデルの創出を目指しています。具体的に、新たなビジネスモデルとして以下の事業を実現してきました。
このデジタル企画部の中でデジタルアセットに関連する事業に特化した構想・開発にあたる部署が、「デジタルアセット事業室」です。デジタルアセット事業室が司令塔となり、デジタル資産の推進を全社で横断的に進めています。
ー齊藤様の役職や役割についてお聞かせください。
齊藤氏:私の役職はプロダクトマネージャーですが、元々存在していなかったポジションです。自身に課したミッション(役割)として、デジタル企画部の前身となる部署の立ち上げ当初から、唯一の専任メンバーとしてデジタルありきの新事業をゼロから設計してきました。また新事業の立ち上げだけに留まらずスケールアップまでを見据えているため、社内展開に向けた体制づくりにも関与しています。元々新事業全般を見ていましたが、デジタルアセット関連ビジネスが伸び始めたことを受け、デジタルアセットに特化した事業ラインを設けることとしました。次のステップとして、プラットフォーム領域を独立化させた新会社を設立し、ファウンダーCEOとして代表に就任予定です。
私の特徴は、大手金融機関に所属しながらスタートアップのように活動している点です。三菱UFJ信託銀行を株主に見立てて、私はさながら一人の起業家としてデジタルアセットの普及に努めています。大企業において、20代から私のような自由な立場で新規事業に挑む事例は、珍しいかもしれません。
一般的なWeb3ビジネスでの王道は、「スタートアップで新システムを開発して大手企業に導入してもらう」という手法です。しかし私は起業せずに、三菱UFJ信託銀行に所属しながらブロックチェーンビジネスに挑戦する道を選びました。
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