PassPayのステーブルコインとは?急変する規制下で描く今後の戦略

Web3事業に挑戦するにあたり、懸念すべきリスクの1つは「外部環境の急変」だ。ブロックチェーンは新興の技術であり、法令面や税制面での扱いにおいて未確定の部分も多い。Web3事業に関する法律や規制の議論が行われている最中であるため、現行のルールが突如として一変する可能性もあるのだ。Web3事業へ挑む事業者は、このような不確定要素と向き合わなければならない。

実際にルールが新設された事例として、ステーブルコインに関する規制が挙げられる。従来は、海外の組織が起点となってさまざまステーブルコインが発行されてきた。その中には、法定通貨との連動が不十分であったために、資産価値を維持できなかった銘柄も存在する。

このような背景から、日本では202361日から「改正資金決済法」が施行され、ステーブルコインの発行要件が定められた。この法改正では、国内におけるステーブルコインの法的な位置づけや発行事業者に関するルールが明文化されたのだ。このように、Web3の業界では目まぐるしい速度で法律や社会情勢が移り変わっていく。

この激動のWeb3業界で、日本円連動型のステーブルコインを普及させようと取り組むスタートアップが存在する。PassPay株式会社(東京都港区)である。PassPayはステーブルコインのみならず、暗号資産ウォレットの開発にも挑んでいる。日本円ステーブルコイン決済を普及させるべく、手軽に扱える決済インフラを一貫して提供しようと取り組んでいるのだ。しかも、日本国内だけでなく、グローバル展開をも見据えたビジョンを描いているという。規制やルールが刻々と変化するブロックチェーン市場において、PassPayはどのようにして事業の方向性を定めているのであろうか。

今回は、同社のCEO 佐藤 幸治氏へPassPayのステーブルコインを通じたWeb3戦略を中心として、以下の項目について聞いた。

  • 状況が目まぐるしく変化するWeb3業界で、どの方向に向かって進むべきか
  • 暗号資産を社会実装する上での障壁とは
  • 大企業がWeb3へ挑むにあたり、まず何に取り組むべきか

「自社のビジネスにブロックチェーン技術を活用したい」と考える読者にとって、目まぐるしく変化するWeb3業界への対処方法は重要な課題であろう。PassPayの事例を通じて、Web3事業に挑む上での大きなヒントを得られるはずだ。

デジタルライフの架け橋に

PassPay株式会社 CEO 佐藤 幸治氏

ーまず、PassPay株式会社の事業内容について、お聞かせください。

佐藤氏:PassPayは、日常生活におけるステーブルコイン決済の実現を目指す企業です。具体的な事業として、以下のサービスを展開しています。

  • 日本円連動のステーブルコイン「JPY WorldJPYW)」の発行
  • 資産管理を目的とした暗号資産ウォレット「PassPay Wallet」の提供

このようにステーブルコインの発行から、受け皿となるウォレット開発までのサービスを一元的に手掛けています。PassPayでは「デジタルライフの架け橋に」をスローガンとして掲げており、Web3のマスアダプション(大衆化)に取り組んでいます。

PassPay株式会社の組織体制について、お聞かせください。

佐藤氏:PassPayには、3名の取締役が在籍しています。

その他、業務委託で5名ほどのメンバーが参画しています。ブロックチェーンの技術を持つエンジニアも在籍しており、高度な案件への対応も可能です。

PassPay株式会社が誕生したきっかけについて、お聞かせください。

佐藤氏:PassPayは、20222月に代表取締役の北野 義勝氏が創業した会社です。北野氏は、ビットコインの黎明期からマイニングなどを通じてWeb3事業に携わってきました。そして、PassPayを創業し、日本円連動型のステーブルコイン「JPYW」を世に送り出しました。

JPYWを普及させていく段階で、北野氏と私が共通の知人を介して出会ったのです。その後、北野氏からのスカウトを受けて、私がPassPayへ参画しました。現在は北野氏が代表取締役を務めており、私は現場を取り仕切る責任者としてCEOに就任しています。

PassPay株式会社の強みについて、お聞かせください。

佐藤氏:PassPayの強みは、Web3の専門知識を有するエンジニアが数多く参画している点です。

優秀なエンジニアのおかげで、ユーザーの要望を即座にサービスへ反映できる体制を構築できています。加えて、メンバー自身も利用者の観点に立ちながら、誰にとっても使いやすいサービスを目指して開発を進めています。

また、私自身がエンジニアと経営の両面からプロジェクトを管理している点も強みと言えるでしょう。私には事業立ち上げの経験があり、開発に関する基本的な知識も有しています。そのため、エンジニアに寄り添いながらサービス開発に関与できています。

「金融」×IT」のキャリアが、現在の仕事へと繋がる

ー佐藤様の役職とPassPay株式会社における役割について、お聞かせください。

佐藤氏:私は、CEOとして実務面の責任者を務めています。特に事業設計やサービス全般における方針決めが、私に課せられた役割です。

現在では、ウォレットアプリの開発に注力しています。Web3のサービスに触れる上で、ウォレットの操作性はサービス全体の質を左右する重要な要素です。そこで、私が中心となって必要な機能を洗い出し、PassPay Walletの使いやすさを追求しています。

PassPay株式会社へ参画に至るまでの佐藤様のご経歴について、お聞かせください。

佐藤氏:私は、これまでに金融やITの分野でキャリアを積んできました。

私が新卒として入社した企業は、外資系のコンサルティング会社です。ここで、3年間にわたってIT系のコンサルタント業務に従事しました。次に、高校時代からの友人と共同で起業に挑戦したのです。1年間ほど事業の立ち上げに取り組み、プロダクトの完成とシードラウンドでの資金調達を見届けて私は去りました。

そして再び会社員に戻り、ITSIer(エスアイヤー)(※1)で金融機関の案件に4年ほど携わりました。その後に転職した先が、コンサルティング会社です。ここで、クレジットカード会社のコンサルティング案件に1年ほど取り組みました。

このような経験を経てから、フリーランスとして独立しています。フリーランスになった後、「専門性を身につけたい」との思いからブロックチェーンの勉強に取り組みました。そして独学で勉強を進める中で、代表取締役である北野氏と出会ったのです。

このように、これまで経験してきた金融やITWeb3の知識が、今の業務に役立っています。PassPay Walletを開発する際にエンジニアと同じ目線で話し合える点も、大きなアドバンテージとなっています。

1 SIer(エスアイヤー)・・・システム開発の受託会社を指す。

激動のWeb3業界において、どの方向に舵を取るべきか

Web3業界は、刻々と変化し続けています。同様に、ステーブルコインも今後どのような方向へ進むのかわかりません。このような市場環境において、どのように開発ターゲットを定めてステーブルコインのサービス設計をしているのでしょうか。

 

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