完全な自律分散化へ!dYdXのDAOを活性化させる戦略とは?

ブロックチェーンの登場によって生まれた新しい金融の概念が「DeFi(※1)」だ。DeFiは金融システムでありながら、特定の管理者が存在しない。プログラムのみが稼働しており、このプログラムに従って自動で取引が実行される。このDeFiの思想から派生した暗号資産取引所が、DEX(※2)である。DEXの場合、特定の国に取引所の拠点を置く必要さえない。そのためDEXは、「自律分散」の思想を好む投資家から支持されている。このような特性上、匿名でのサービス提供も可能であるため、運営者の詳細な情報を明かしていないケースも多い。

そんなDEX市場の中で、コアメンバーが積極的に表舞台へ登場し、啓蒙活動を続けるDEXが存在する。世界最大級の分散型取引所「dYdX」だ。dYdXの創設者「Antonio Juliano(アントニオ・ジュリアーノ)」氏をはじめとして、コアメンバーが公の場に姿を現して教育活動を展開している。打倒CEX(※3)を目指しており、取引所の完全分散化を目指しているのだという。

dYdXの特徴は、完全な自律分散化を目指している点であろう。DAOが意思決定の権限を有しており、コミュニティの意向に沿ってサービスが展開されていく。そのため、DAO内での議論がなによりも重視されているのだ。

このDAOの裏方として存在する組織が、dYdX Foundationである。dYdX FoundationはいわばDAOにおけるファシリテーターであり、DAO内での議論を建設的なものへと導く。加えて、コミュニティ全体を活性化させる役割も担っているという。果たして、どのようにdYdXコミュニティを盛り上げているのだろうか。

また、2023年7月5日にはdYdXにおいて注目すべきイベントである「バージョン4(V4)」のパブリックテストネットがリリースされた。これにより、dYdXコミュニティはさらに権限の分散化が進んだのだという。一体、どのような戦略で完全自律分散化を進めているのか。

今回は、dYdX FoundationのJapan Lead(日本支部)大木 悠氏へdYdXの事業戦略を中心として、以下の項目について聞いた。

  • DAOやFoundationなど、dYdXがいくつもの組織を抱えている理由
  • dYdXの完全自律分散化に向けた取り組み
  • DAOに参加する意義とは

DEXプロジェクトは、なかなか実態が表に出てこない。そのような中で、dYdXのように、コミュニティを形成して積極的に活動しているプロジェクトは稀であろう。今回のインタビューを通して、Web3プロジェクトの完全分散化に向けた戦略を学べるはずだ。

※1 DeFi(Decentralized Finance)・・・分散型金融を指す。スマートコントラクトによって自動で取引が実行されるため、人や組織が介在しない。

※2 DEX(Decentralized Exchanges)・・・分散型取引所を指す。プログラムのみで構築されたマーケットであり、従来の証券取引所のような管理者が存在しない。

※3 CEX(Centralized Exchange)・・・中央集権型の取引所を指す。従来の金融機関と同様に、取引所の運営管理者が存在する。

コミュニティを軸とした世界最大級の分散型取引所

dYdX Foundation Japan Lead 大木 悠氏

ーまず、分散型取引所「dYdX」について、概要を教えてください。

大木氏:dYdXは、世界最大級の分散型取引所です。デリバティブ取引が充実している上級者向けの取引所であり、一日の平均取引総額は10億ドルにも及びます。

dYdXのプロジェクトは、以下に挙げる3つの組織によって推進されています。

  • dYdX Trading Inc.・・・DEXの開発者
  • dYdX Foundation・・・dYdX DAO を支援する組織
  • dYdX DAO・・・トークンの所有者を中心とした意思決定のための組織

この3つの組織が互いに協力し合うことで、dYdXのコミュニティが形成されています。

dYdX Trading Inc.は、プロダクト開発にのみ専念する一方で、dYdX Foundationは主にコミュニティの育成や自律分散化に努めています。

ーdYdX Trading Inc.の役割について、教えてください。

大木氏:dYdX Trading Inc.は、コード(プログラム)の開発組織です。ニューヨークに拠点を置いており、取引所の手数料収入が資金源となっています。

2023年6月時点では、dYdX Trading Inc.が取引所の取引板を管理しています。

裏方として、DAOコミュニティを盛り上げていく

ーdYdX Foundationの役割について、教えてください。

大木氏:dYdX Foundationの役割は、コミュニティ全体の活性化です。

dYdX Foundationには、dYdX創設以来の知見が蓄積されています。このノウハウを活用して、dYdX DAO内で健全な議論が繰り広げられるように導きます。要するに、DAOをサポートする裏方だと言えるでしょう。

dYdX Foundationが掲げる最終目標は、「dYdX Foundationの解散」とも言えるでしょう。なぜなら、DAOが完全に自律分散化を達成し自走し始めた暁には、dYdX Foundationは役割を終えるからです。よって、自己の将来的な消滅を目指して活動を続けています。

ーdYdX Foundationの組織体制について、お聞かせください。

大木氏:2023年6月時点での社員の在籍数は、13名です。

CEOをはじめとして、ガバナンス、マーケティングなど各部門の責任者が配置されています。この他に、以下の4カ国を重点マーケットに指定しており、支部を設置しています。

  • フランス
  • インド
  • トルコ
  • 日本

この日本支部で活動しているのが、私です。

ーdYdX Foundationにおける日本支部の役割について、お聞かせください。

大木氏:日本支部は、私1名で活動しています。日本支部における主な活動は、以下の通りです。

  • 日本人ユーザーへのdYdXの動向に関する広報活動
  • 日本人ユーザーとのコミュニケーション
  • バリデータ(※4)探し

また、dYdXのフロントエンド開発に協力してもらえるパートナーも探しています。なぜなら将来的に、日本専用のdYdXプラットフォームを提供する計画だからです。今後、dYdXではソースコードを公開します。このオープンソースをもとに、各国の規制に準拠した地域ごとのプラットフォームを提供する予定です。この計画を実行するために、将来の提携先を探しています。

※4 バリデータ・・・ブロックチェーンネットワークの維持に貢献する協力者を指す。

ーdYdX Foundationに参画するまでの大木様のご経歴について、お聞かせください。

大木氏:私はテレビ局で報道に携わった後に、コインテレグラフジャパンやクラーケンジャパン(暗号資産取引所)といったブロックチェーンの企業に在籍しました。クラーケンジャパンで働いていた時に、dYdXがたまたま日本支部の責任者を探し求めていたのです。そこでこの求人に応募し、dYdXへ参画しました。

dYdXへ移籍を決めた理由は、中央集権型の取引所に閉塞感を抱いていたからです。すでに日本では、コインチェックなど大手の暗号資産取引所が地位を確立しています。加えて、トークンの新規上場にも時間がかかる状態でした。このような課題に直面し、新規開拓に挑戦できる仕事を求めて分散型取引所へと移籍したのです。

バージョン4への移行で、さらなる分散化の実現へ

ー2023年7月5日に、dYdXではバージョン4(V4)のパブリックテストネットがリリースされました。このV4の概要について、お聞かせください。

 

ここからは無料会員限定の記事です

無料会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

  • オリジナル記事が読み放題
  • 参加者限定イベントへのご招待
  • ニュースレターの配信

ログイン

Googleでログイン Facebookでログイン Twitterでログイン
または
パスワードをお忘れの方はこちら

アカウントをお持ちでない方は新規登録

新規登録(無料)

Googleで新規登録 Facebookで新規登録 Twitterで新規登録
または

すでにアカウントをお持ちの方はログイン