ブロックチェーン技術を活用した取引の利点の一つには、世界中の人々と匿名のまま資金をやり取りできる点がある。個人間で銀行決済よりもスムーズに取引できるため、流動性の向上に大きく貢献できるのだ。
しかし一方で、憂慮してしまう事態も起こっている。個人間でスムーズな取引ができるが故に、詐欺事件の温床となっているのだ。例えば犯罪者は、公式サイトにそっくりな偽のNFT発行画面を作成し、SNSなどを経由してユーザーに「送金」のボタンを押すよう仕向ける。ユーザーが偽サイトだと気づかぬまま「送金」のボタンをクリックすると、直ちに資金が犯罪者の手に渡ってしまうのだ。
このような一見しただけでは分からない巧妙な手口により、成りすましやフィッシングによる詐欺事件が後を立たない。実際に、世界中では次々と詐欺被害の報告がなされている。ブロックチェーン上で詐欺事件が横行したままでは、ブロックチェーン技術が決済インフラとしての役割を果たすことやWeb3のマスアダプション(大衆化)は難しいだろう。
このような課題を解決すべく、Web3に特化したセキュリティサービスに力を入れるスタートアップが存在する。株式会社KEKKAI(東京都新宿区)だ。株式会社KEKKAIが開発した拡張アプリは、危険なトランザクションを事前に検知できる。つまり、Web3におけるセキュリティソフトを提供しているのだ。
この株式会社KEKKAIを率いるのは、現役の大学生でありながら代表を務める杜 瑪(Danny)氏だ。中国から留学のため来日し、学業と起業の二刀流に取り組む人物だ。幼い頃からビジネスに接しており、株式会社KEKKAIは3社目の起業だという。一体どのような経緯で、Web3領域でのセキュリティサービスを提供しようと思いついたのか。
今回は、同社のCEO 杜 瑪(Danny)氏へ株式会社KEKKAIのセキュリティサービスを中心として、以下の項目について聞いた。
自社事業へブロックチェーン技術の導入するにあたって、セキュリティの確保は欠かせない。Web3の実用化を目指す読者にとって、ブロックチェーンにおけるセキュリティ確保のあり方を学べるであろう。
株式会社KEKKAI CEO 杜 瑪(Danny)氏
ーまず、株式会社KEKKAIの事業内容について、お聞かせください。
杜 瑪氏:KEKKAIは、Web3におけるセキュリティサービスを提供する企業です。
ウェブブラウザの拡張アプリ「KEKKAIプラグイン」というプロダクトによって、ユーザーを詐欺事件から守ります。
KEKKAIプラグインにはセキュリティアルゴリズムが搭載されており、危険な取引を事前に検知できます。また、トランザクションのシミュレーションも可能です。これにより、NFTのミントやスワップの際におけるスキャムを未然に防止できます。
このような個人向けの拡張アプリに加えて、法人顧客向け事業として、危険検知やシミュレーション機能を備えたAPI・SDKサービスを提供しています。
ー株式会社KEKKAIが解決したい社会課題について、お聞かせください。
杜 瑪氏:KEKKAIプラグインを通じて、Web3における詐欺事件の問題を解決したいと考えています。
ブロックチェーン上での詐欺による被害額は、2022年だけで4900億円にものぼります。またフィッシングやラグプルなど、詐欺手法も多様です。新たな詐欺が次々と登場し、その手口は巧妙化しています。これほど危険な状況では、安心してWeb3を利用できません。そこでKEKKAIでは、誰もが安心して利用できるWeb3環境の構築を目標にしています。
ー株式会社KEKKAIにおける杜 瑪様の役職や役割について、お聞かせください。
杜 瑪氏:私は、Web3セキュリティのスタートアップ「株式会社KEKKAI」を創業しました。
現在はCEOとして、経営の全般に携わっています。
ー杜 瑪様が株式会社KEKKAIを創業したきっかけについて、お聞かせください。
杜 瑪氏:創業のきっかけは、私自身がスキャムの被害に遭遇したことです。
2022年に私はフィッシング詐欺に引っかかり、60万円相当のイーサを失いました。そこで被害に遭った直後、Web3に対応したセキュリティソフトを探し求めたものです。しかし世の中には、Web3のスキャムを防ぐソフトが存在しませんでした。そこで、自分自身でセキュリティソフトを作ろうと決意したのです。この出来事をきっかけとして株式会社KEKKAIを創業し、2022年11月からサービス開発に着手しました。
ー株式会社KEKKAIを創業するまでの杜 瑪様のご経歴について、お聞かせください。
杜 瑪氏:私は、幼い頃から「いつか起業したい」と考えていました。なぜなら、幼少期からビジネスに触れる機会が多かったためです。
中国で生まれ育った私は、まず小学生の頃にスモールビジネスの原体験をしました。当時の
中国で流行していたものが、オンラインゲームでした。そして親の職業柄の関係で、私はこれらゲームのポイントカードを入手できる環境にあったのです。そこでポイントカードを流通させて、お小遣いを得ていました。その後もエンターテイメントやインターネットを通じて、ビジネスの世界に触れていました。
そして最初の起業に挑戦したのが、2017年の高校2年生の時でした。2018年からは留学で日本を訪れ、大学在学中に2社目の起業を経験しました。その後、ブロックチェーン領域に興味を抱いて挑戦したのが、ノーコードによるWeb3のプラットフォーム開発です。この時に得たWeb3関係の人脈が、今でも私を支えています。
このような経緯をたどって、3社目となる起業としてKEKKAIを創業したのです。現在、私は大学生として学校に通いながら、スタートアップ経営をしています。
ー杜 瑪様は、どのような理由でクリプト領域に興味を抱いたのでしょうか。
杜 瑪氏:新興市場であるWeb3に対して、大きな可能性を感じた点が理由です。
Web3のマーケットは、急速な勢いで加速しています。そのため、ブロックチェーンの黎明期から強い関心を抱いていました。また、私自身もいち早くからトークンやNFTに触れていたため、このWeb3分野で業界に貢献したいと思うようになったのです。
このような理由から、まずはWeb3におけるノーコードのプラットフォーム開発に着手しました。その後、セキュリティソフトの事業へと方針を転換して、KEKKAIの創業に至りました。
ーWeb3セキュリティの拡張アプリ「KEKKAIプラグイン」について、サービスの概要を教えてください。
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