NFTには、革新的な機能がある。NFTを取引した際に、収益の一部がNFT発行者へ還元される機能だ。つまり、NFTがさまざまな人の手に渡った場合でも、発行者はその都度金銭的な利益を得られる。このような機能は、中古品などの二次流通市場を大きく変革させるきっかけとなるだろう。
例えば、従来における中古本の市場では、いくら本が取引されようとも著者の元には1円たりとも収益が入らない。なぜなら収益を著者へ分配する仕組みがないからだ。これに対してNFT化された電子書籍では、転売のたびに収益の一部が自動的に著者の暗号資産ウォレットへ届く。この著者の取り分をいくらにするかは、NFTの発行時に設定が可能だ。
このような革新的な仕組みを広く世の中に普及させるため、社会のあらゆる権利をNFT化しようと試みるスタートアップが存在する。株式会社チケミー(東京都文京区)だ。株式会社チケミーはNFTを通じて、利益が生産者へと還元される仕組みを作ろうとしている。
さらに株式会社チケミーでは、商品の流動性を高める目的で、会員証やチケット、所有権などさまざまな価値をNFT化しようと挑んでいる。社会のあらゆる価値がNFT化されれば、距離や時間の制約を超えて、より自由な商取引が実現されるであろう。
この株式会社チケミーでCOOを務める人物が、赤塚 育海氏だ。現役の大学生でありながら、NFT取引プラットフォームの普及に務めている。この赤塚氏は、「良い転売」への転換を提唱している。この「良い転売」では、NFTの保有者がセールスパーソンとなり、商品の拡販に貢献する仕組みが実現するとのこと。NFTを用いた良い転売は、二次流通の市場に新たなビジネスチャンスを生み出すのだと言う。一体あらゆるモノがNFT化された先に、どのような社会が待ち受けているのか。
今回は、同社のCOO 赤塚育海氏へ株式会社チケミーのチケット流通プラットフォームを中心として、以下の項目について聞いた。
株式会社チケミーのビジネスは、従来のチケットを単にNFTへ置き換えるものではない。世の中の価値や権利をNFT化し、新たなユーザー層へと届けようとする取り組みである。さまざまな自社事業を展開する読者にとって、「自社が保有する価値や権利のNFT化」は身近な題材であろう。このチケミーの取り組みを通じて、「自社事業」×「NFT」の可能性を感じられるはずだ。
株式会社チケミー COO 赤塚 育海氏
ーまず、株式会社チケミーの事業内容について、お聞かせください。
赤塚氏:チケミーは、「世の中のあらゆる価値」をチケット化する企業です。社会で取引されている権利や無形資産をNFT化し、流動性を向上させます。
チケミーは、以下の3つのサービスから構成されています。
それぞれ独立したサービスであるものの、いずれも「チケット化して取引ができる」というコンセプトは共通しています。
ー株式会社チケミーの組織体制について、お聞かせください。
赤塚氏:2023年5月の時点で、12名の社員が在籍しています。その内、ほぼ半数をエンジニアが占めています。
このエンジニアの層の厚さこそが、チケミーの強みです。実際に彼らエンジニアの技術力のおかげで、NFTからSBT(※1)に切り替える機能も実現しました。
※1 SBT(SoulBound Token)・・・他者への譲渡ができないトークンを指す。暗号資産ウォレットに永続的に残り続けるため、イベントに出席した証明となりうる。
ー株式会社チケミーについて、創業に至ったきっかけをお聞かせください。
赤塚氏:CEOの宮下 大佑氏が、「NFTを用いれば二次流通の市場に新たなビジネスチャンスを生み出せる」と確信したことがきっかけです。NFTに備わっているロイヤルティ(二次流通時の手数料)機能によって、社会が抱えるさまざまな課題を解決できると考えたのです。このような着想をきっかけとして、チケミーは誕生しました。
例えば、我々が達成したい社会課題の一つとして、「持続可能な社会の実現」が挙げられます。現代は、大量消費社会と呼ばれる世の中です。なぜこのような社会構造になってしまったかと言うと、寿命の長い製品を作るメリットがメーカー側にないためです。たとえ、製品が中古品市場で売買されたとしても、メーカーは金銭的な利益を得られません。結果として、耐久性の低い製品が半永久的に作られては捨てられる世の中になってしまったのです。
そこでチケミーでは、中古品取引でもメーカー側に収益が入る仕組みを普及させたいと考えています。製品が長い期間にわたって使われ続けることで利益を得られれば、メーカー側にも「耐久性の高いものを生産しよう」というインセンティブが生まれるでしょう。一度耐久性の高い製品を生産し、末永く利用できるようなサルテナブルな世の中を目指しています。
このように、チケミーは単にイベントチケットのNFT化を目指すだけの企業ではありません。社会構造をも変革させるような壮大なビジョンへ挑戦しているのです。
ー株式会社チケミーにおける赤塚様の役職や役割について、お聞かせください。
赤塚氏:私はCOO(最高執行責任者)として、主に営業や社内統制を統括しています。
営業活動では、法人顧客に対するセールスを担当しています。この他に、チケミーの魅力を発信するのも私の役割です。
ー株式会社チケミーに参画するまでの赤塚様のご経歴について、お聞かせください。
赤塚氏:私は、現在休学中の早稲田大学4年生です。
数学に関心があり、かつては日本最大の数学コミュニティ「数学を愛する会」を主催していました。この数学における暗号理論に触れる中で、ブロックチェーンの可能性に気づいたのです。
そのような中で、CEOの宮下 大佑氏からのCOO就任の打診を受けました。しばらく悩んだ末に、COOとして参画する決意をしたのです。この決断が転換点となり、私の大学生活は一変しました。
このように、私はもとより学術的な観点からブロックチェーンに触れていたため、NFTを投機目的で買い集めることはありませんでした。だからこそ、COOとなった今では「NFT」×「実社会での利便性」の側面を重視してサービスの設計にあたっています。
ーNFTチケット取引プラットフォーム「TicketMe」について、このようなサービスを打ち出した狙いを教えてください。
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