ブロックチェーン領域における多くのプロジェクトでは、コミュニティが重要な役割を果たす。このコミュニティの内部では参加者たちが活発に交流しており、プロジェクトをより良いものにするために協力しあっているのだ。メンバーたちの境遇はそれぞれ異なるものの、プロジェクトに対するロイヤルティ(愛着)によって一つの方向性に向かって団結している。このコミュニティの中で、参加者たちの連帯感や仲間意識はさらに強化されていく。
このようなブロックチェーンコミュニティの特徴に注目している大手メディアが存在する。在京キー局のひとつである「株式会社 TBSラジオ(東京都港区)」だ。同社はブロックチェーンに関する実証実験を企画し、ラジオ番組の中でリスナーに対してNFTを配布した。このNFTは、配布からわずか数分で予定配布枚数に達するほどの人気を博したという。TBSラジオが推し進めた今回の実証実験には、どのような狙いが隠されているのであろうか。
この実証実験を主導した人物が、TBSラジオ 事業創造センターの井上 重吾氏だ。PodcastやYouTubeの活用など、井上氏は新たな音声コンテンツのあり方を探求している。このような取り組みの一環として、「ラジオ×NFT」の施策を打ち出したのだという。井上氏曰く「ラジオ番組にはある種のコミュニティが形成されており、ブロックチェーン領域との共通点が多い」と語る。どうやら、NFTの導入を通じてラジオ番組の新たな楽しみ方を実現しようとしているようだ。
TBSラジオは、果たしてどのような目的でブロックチェーンに関する実証実験に挑んだのか。また今回の取り組みを通じて、どのような気づきを得たのだろうか。今回は、TBSラジオ 事業創造センターの井上 重吾氏へ、ブロックチェーン技術を活用したラジオ番組の実証実験を中心として、以下の項目について聞いた。
自社の事業へのブロックチェーン技術の導入に向けて、実証実験を企画している企業も多いであろう。しかし実例が少ないため、どのようにして実証実験を進めるべきかの判断が難しい。そのような中で、大手メディアによるNFT施策への取り組みから、多くのポイントを学べるはずだ。
株式会社 TBSラジオ UXデザイン局・UXビジネス局 事業創造センター 井上 重吾氏
ーまず、株式会社 TBSラジオにおける事業創造センターについて、組織の役割をお聞かせください。
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