コロナ禍の期間には、現実世界の代替としてメタバースの活用が期待された。現実世界で人々が集まれない状況でもメタバース空間では音楽イベントが開催されるなど、新たなイベントのツールとして注目を集めたのだ。
とはいえ、コロナ禍が落ち着きつつある昨今、メタバースに対する人々の熱量は低下しつつある。メタバースの社会実装を進めるには、単なる現実世界の置き換えではなく、メタバースでしかできない体験が求められている。
このような市場環境の中でメタバースの可能性を追求している大手通信キャリアが、ソフトバンク株式会社(東京都港区)だ。同社はメタバース上でバーチャルソフトバンクショップを開設するなど、数多くのメタバース施策に取り組んできた。「メタバース・NFT部」という部署が存在し、専属のメンバーがメタバースやNFTの企画・立案に従事しているほどだ。
民間企業だけでなく、行政組織や自治体との提携も進められている。具体例のひとつが、兵庫県養父市との取り組み「バーチャルやぶ in ZEP(ゼップ)」である。メタバース上で自治体の魅力をPRするなど、地方創生に貢献するためのプロジェクトだ。
この他にも自社の取り組みとして、メタバース空間にソフトバンクショップを開設した。メタバース空間で接客が受けられて、販売クルーに対して気軽に質問もできるのだ。若者と新たな接点を持つために設置された店舗であり、実際にこれまでにない新たな顧客との交流が生まれているという。一体どのような理由で、ソフトバンクはこれほどまでメタバース施策に力を入れているのか。
今回は、ソフトバンク サービス企画本部 コンテンツ推進統括部のメタバース・NFT部 企画課に所属する久留宮 崇仁課長、土屋 茉由氏へ、ソフトバンクのメタバース施策を中心として以下の項目について聞いた。
メタバースを活用して自社の事業を加速させたいと考える事業者も多いであろう。しかし、どのプロジェクトも試行錯誤の段階が続いており、ビジネス向けのモデルケースは少ない状況だ。そのような中で、大手通信キャリアによるメタバースの取り組みは、事業者である我々にとって大いに参考となるだろう。
ーまず、ソフトバンク株式会社におけるメタバース・NFT部の役割や概要について、お聞かせください。
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