仮想とリアルをつなぐ“3種のトークン”。「Questry Protocol」設計者・元日銀の内田氏に聞く

非中央集権的なブロックチェーン技術を応用した経済圏の拡大を目指すWeb3のコンセプトは、法定通貨に基づく経済活動を中央集権的なデータベースで支える既存の金融システムへの「アンチテーゼ(対立する理論)」だとよく言われる。伝統的な経済理論や法規制に従ってきた実務家の多くは現在、Web3の動向は追いつつも、既存の立場にいながらブロックチェーン技術を取り込もうとしており、自らWeb3スタートアップに飛び込んで “挑戦者”に回るケースはまれだ。

そうした希少な挑戦者の一人が、ブロックチェーンの社会実装を目指すスタートアップである株式会社クエストリーの取締役に2023年6月就任した内田善彦氏だ。金融秩序の中枢である日本銀行・金融庁・東京大学などで30年近いキャリアを重ねてきた内田氏は、クエストリーが提唱するトークンの通信規格「Questry Protocol」の開発にあたり、理論と技術の両面から協力したという。金融にまつわるルールのエキスパートが、新たなルールを提示するWeb3のどこに可能性を見いだし、何を実現したいのか、同氏に聞いた。

「日銀券がなくても経済は回る」。技術者視点でCryptoの将来を確信

株式会社クエストリー 取締役 内田善彦氏

−内田さんは1994年から2023年まで日本銀行で金融行政に携わり、この間ルールづくりや監督役を担う金融庁への出向、また大阪大学・東京大学の大学院で理論面を含む金融や経営に関する教育研究も経験されたと聞いています。まさに、今の社会を動かすお金の仕組みを知り抜かれたようなご経歴ですが、なぜ新興のWeb3分野に興味を持たれたのですか。

 

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