事業者がユーザーの個人情報を収集する際には、情報管理に細心の注意を払わなければならない。なぜなら、これらのデータは個人情報保護法によって厳重な管理の対象となるからだ。そのため各企業は、莫大な費用と労力を投じて個人情報を保管しているのだ。しかし、このような管理体制を敷いてもなお、個人情報の漏えいに関する事件は後を絶たない。従業員の過失だけでなく、社外からのサイバー攻撃にも備えなければならないため、企業にとって個人情報の保管は大きな負荷となっている。
またユーザーの立場としても、企業に個人情報を提供するのは手間である。サービスごとに個人情報を登録しなければならない上に、各サイトでIDとパスワードを設定する必要があるからだ。
それならばいっそのこと、「企業が個人情報を保有しない」という選択肢も考えられるだろう。ここで登場するのが、ブロックチェーン技術である。ブロックチェーンの世界では、中央集権的な管理者が存在しない。そのため、暗号資産やトークンの所有権をユーザー自身が持つのだ。実際にWeb3プロダクトでは、ユーザーから個人情報の提供を受けずともサービスを運営できる。
このようなブロックチェーンの特色を活用し、新たなIoT(※1)プラットフォームを普及させようと取り組む企業が存在する。ジャスミー株式会社(東京都港区)だ。ジャスミーが提供するのは、プライバシーとセキュリティを両立させた事業者向けのプラットフォームだ。このプラットフォームを導入すると、個人情報を収集せずに顧客管理やポイントの付与ができるという。
※1 IoT(Internet of Things)・・・モノのインターネットを指す。身の回りのあらゆる製品をインターネットに接続し、相互の連携によって効率化を目指す思想。
このジャスミーのIoTプラットフォームは、実際に日本旅行やサガン鳥栖で導入されている。個人情報の課題を解消するだけでなく、ファントークンを活用した新たなプロモーションも展開できるようになったそうだ。ブロックチェーンを活用したIoTプラットフォームは、一体どのような恩恵を導入先の企業へもたらすのか。
このジャスミーを率いるのは、ソニーの出身者たちだ。代表取締役を筆頭として、数多くの元ソニー在籍者が参画している。彼らは、ソニー時代からプライバシー保護とサービスの両立に強い関心を抱いていたのだという。ソニーの出身者たちは、果たしてどのような経緯でジャスミーに集い、ブロックチェーン領域での挑戦を決意するに至ったのか。
今回は、同社の執行役員である柿沼 英彦氏へジャスミー株式会社のIoTプラットフォームを中心として、以下の項目について聞いた。
プライバシー保護に対する世間の風潮が強まる中で、事業者はユーザーの個人情報をどのようにして管理すべきなのか。ジャスミーが目指す「データの民主化」について理解することで、その答えを得られるかもしれない。
IoTとWeb3の融合を目指すジャスミーの取り組みは、プライバシー保護を考える上で大いに参考となるはずだ。
ジャスミー株式会社 執行役員 柿沼 英彦氏
ーまず、ジャスミー株式会社の事業内容について、お聞かせください。
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