ブロックチェーンの用途として注目を集めているのが、「ゲーム分野」である。NFTやトークンを活用すれば、ゲーム内の通貨やアイテムが現実の経済と結びつくためだ。この分野では、すでに「Axie Infinity」や「STEPN」などのヒット作も生まれている。しかし一方で、これらのゲームに投機的な側面がある点も否定できない。よってトークンの市況相場が冷え込むと、利用者数も減少してしまう。
このように現状のWeb3ゲームはゲーム自体の面白さではなく、「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」を目当てにしたユーザーが集まっている。しかしWeb3ゲームを恒久的に繁栄させるには、金銭的な利益ではなくブロックチェーンを駆使した「新たなユーザー体験」を提供しなければならない。そこで世界中のさまざまな企業が、Web3ゲームのビジネスモデルを探求し続けている。
こうした中、日本でもWeb3ゲームの開発に乗り出した大手企業が存在する。ソーシャルゲームを手掛けているグリー株式会社(東京都港区)だ。同社はブロックチェーンに特化したグループ会社を設立し、本格的なWeb3ゲームの開発に挑んでいる。
特に着目すべきは、法務部門から経理部門に至るまで各部署の社員がブロックチェーンに精通している点だ。一般論として、Web3分野は人によって知識の格差が大きいため、組織全体での合意形成が困難になる。特に規模の大きい大企業では、なおさらだ。しかし一体、グリーではいかにして管理部門の社員にまでWeb3の知見を行き届けるに至ったのか。
今回は、同社のメタバース事業本部 Web3事業部 Head Of Business Developmentの村田 卓優氏へグリーのWeb3戦略を中心として、以下の項目について聞いた。
ブロックチェーン上でのコンテンツ展開を目指す読者にとって、大手企業の戦略から多くのヒントを得られるであろう。
グリー株式会社 メタバース事業本部 Web3事業部
Head Of Business Development 村田 卓優氏
ーまず、グリー株式会社のWeb3事業について、お聞かせください。
村田氏:グリーでは、メタバース事業本部の傘下にWeb3事業部を配置しています。
加えて2022年7月には、Web3に特化したグループ会社「BLRD(ブラード) PTE. LTD.」を設立しました。
BLRDが迅速な意思決定によって大胆なWeb3施策を実行し、親会社のグリーはBLRDに対して財政面や事業基盤の支援体制を提供します。
グリーではメタバース事業本部の一部門としてWeb3を扱っており、最終的にはメタバースとブロックチェーンの融合も視野に入れています。ただ一方で、グリーのメタバースコンテンツは一定規模まで拡大しており、安易にブロックチェーンの要素を追加できません。そこで既存のメタバースビジネスから独立した形式で、BLRDがブロックチェーン事業のビジネスモデルを模索しています。
ー村田様の役割について、教えてください。
村田氏:私の役割は、Web3事業における渉外です。具体的には、ブロックチェーン開発元との交渉や契約業務に携わっています。この他にも、暗号資産取引所やスタートアップとの提携も私の仕事です。
グリーにおける最終目標は、Web3ゲームのグローバル展開です。この目標を達成するには、Web3技術やマーケットに関する知見が欠かせません。そこで私はインドなど世界中の企業と面会を行い、Web3の情報収集や人脈形成にあたっています。
ー村田様がWeb3プロジェクトへ抜擢された経緯について、教えてください。
村田氏:2020年の新型コロナウイルスが蔓延し始めた頃、外出制限で時間に余裕が生まれたためDeFiに挑戦しました。このDeFiの体験談をSNSで発信したところ、NFTに関する副業の依頼が舞い込んだのです。この経験を契機に、ブロックチェーンへ本格的に取り組むようになりました。
ちょうどその頃は、ゲーム業界で「NBA Top shot」の成功事例が脚光を集めていた時期です。この成功例を目の当たりにし、グリー社内でも水面下でWeb3参入への検討が始まっていました。私は事業買収やブロックチェーンの知識を持っていたため、Web3事業のチームに抜擢されたのです。
ーグリーは、なぜWeb3参入を決断したのでしょうか。
村田氏:新しい技術トレンドに対して、いち早く対応するためです。
面白いエンタメサービスを提供するために、グリーでは新しい技術分野にも積極的に挑戦しています。グリーにおける過去の事業も、技術革新の変遷に沿って歩んできました。SNSやスマートフォン、メタバースといったテクノロジーが登場する度に、新たなビジネスモデルが生まれたのです。そしてブロックチェーンも、次なる技術トレンドになるかもしれません。このような期待から、ブロックチェーンへの参入を決断しました。
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