日本政府の成長戦略では現在、「サプライチェーンの効率化」「サービス間でのID連携」という2つの用途で、ブロックチェーンの活用検討を進めることが明文で示されている。2021年6月に閣議決定した「成長戦略実行計画」にこの内容が盛り込まれるまでには、ブロックチェーンを社会実装する意義を説く業界関係者の熱心な働きかけもあったという。
そうした働きかけを担った一人で、業界団体「日本ブロックチェーン協会」で政策提言などの渉外業務をリードする荻生泰之氏(EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 コンサルティング ストラテジック インパクト パートナー、フィンテック/ブロックチェーン リーダー)は、ブロックチェーンを応用したサプライチェーンの効率化に関する特許技術の発明者の一人という顔も持つ。戦略コンサルティングを通じ、より良い社会の実現を目指しているという同氏に、ブロックチェーン技術が日本の未来にどう貢献できるかについて聞いた。
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジックインパクト パートナー
フィンテック/ブロックチェーン リーダー 荻生泰之氏
−まず、現在ご担当の業務について簡単にご紹介ください。
私が所属する組織「ストラテジック インパクト」は社会課題の解決を行うための組織で、課題に関わる業界内で先進的な考え方の主導役となるソートリーダーシップ、また政策の基礎となる情報を提供するために政治家の方々とお話しするといった活動をしています。
戦略コンサルタントとして個別のプロジェクトに入ることもあり、主にブロックチェーンやフィンテック、またこれらによって大きな価値創造の余地がある食料生産・流通の分野に多く関わっています。
もともとコンピューターを小学生の頃から触っていて、システム構築やコードの解析といった作業も苦にならないタイプであり、戦略コンサルティングだけでなく、ITコンサルティングも得意であったため、2008年にブロックチェーンが登場したときにも抵抗なく受け入れられました。
社会課題に本格的に取り組むようになったのは、9年前からです。
これは、学生時代に「世の中を良くしたい」という思いで研究に励んでおり、コンサルティング業界に入って時間が経つうちに「職業人以前の一国民・一市民として、コンサルティングの手法を適用して世の中をもっと良くできないか」との考え方に至ったことがきっかけです。
−ブロックチェーンの活用が昨年6月の閣議決定に盛り込まれて国家戦略となるまでに、政策提言などで尽力されたそうですね。
他ならぬ日本で大量の暗号資産が消えた、2014年の「マウントゴックス事件」を受けて政府・与党関係者から対策への助言を求められたのを機に、私は業界団体の設立や政策提言にいち早く携わり、ブロックチェーン推進派でつくる議員連盟のお手伝いなどもしてきました。
ブロックチェーンは暗号資産のみならず、広く産業の高度化や市民生活の向上に資する基盤的技術となる可能性が見出されています。
このような背景から、米国や英国では国を挙げてブロックチェーンを推進しており、中国も独自のブロックチェーンサービスを提供しています。
そうした中、個人が主導する形を含めて新たな担い手がリードしていく今後の日本経済の成長や、より便利な社会づくりを考えたとき、ブロックチェーンの活用を、個別企業や産業界の取り組みにとどまらない国家戦略として位置づけることは、どうしても必要な、ある種の「一丁目一番地」という確信がありました。
日本でもブロックチェーンが国の戦略に位置づけられ、さらにWeb3.0がそれに続く動きをみせていることの意義はやはり大きく、この分野に関わる多くの人が今後、さまざまな場面で国の後押しを実感できるようになってくると思います。
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