NFT市場が急拡大している。米国の調査会社ベリファイド・マーケット・リサーチ(VMR)が2022年7月13日に発行したレポートによると、NFT(非代替性トークン)の市場規模は2030年に2310億ドル*になると予測した。
NFTは、ブロックチェーン技術を使い、デジタルデータに証明書を発行できる仕組みをいう。
NFTが世界的に盛り上がる中、楽天グループは、2022年2月25日、NFTマーケットプレイスおよび販売プラットフォームとして「Rakuten NFT」の提供を開始した。
なぜ、楽天がNFTに参加するのか?そして、今後の展開をどのように考えているのか?
楽天チケット 代表取締社長 兼 楽天グループ株式会社 NFT事業部 ゼネラルマネージャー 梅本悦郎氏に、「Rakuten NFT」について深く切り込んでみた。
そこでもっとも気になったキーワードは、『NFTの民主化』と『グローバル展開』だ。
梅本悦郎(うめもと・えつろう)氏/楽天チケット 代表取締社長
兼 楽天グループ(株) NFT事業部 ゼネラルマネージャー
ーなぜ、楽天がNFT事業に取り組むことになったのでしょうか?
楽天がNFT事業に取り組む理由は主に2つあります。
『NFTの民主化』と『グローバル展開』です。NFTが多くの人に普及することで、これまでにない新しい体験や価値を生み出すことができるようになります。
そんなNFTの発展に、楽天グループとして貢献していきたいのです。
ー『NFTの民主化』とは?
『NFTの民主化』とは、もっと多くの人が安全に、そして安心してデジタルコンテンツを楽しんでもらう世界観のことです。
NFTはブームと言われてはいますが、まだ一部の人たちの間で盛り上がっているにすぎません。
もっと一般のユーザーが参入できれば、とてつもなく大きなマーケットになります。
しかし、そこにはある問題が潜んでいました。
それは、一般のユーザーが参入しにくいという精神的、そして技術的なハードルです。これまでのNFTは、暗号資産を購入し、ウォレットを接続して、主に海外のマーケットプレイスで楽しむものでした。このような複雑なステップでは、一般的なユーザーが気楽に参加することは難しいのではないでしょうか。
国内でもNFTマーケットプレイスは増えています。
しかし、やはり暗号資産の購入が必要なので、一般的なユーザーにはリスクやハードルが高いと感じてしまう方も多いでしょう。
しかし、楽天グループなら、国内で1億以上の楽天会員からなる顧客基盤を有しており、誰でも簡単にショッピングを楽しんだり、安全に決済や送金ができたりする仕組みを有しています。
70超のサービスを展開しているノウハウもあり、これらとのシナジー効果も期待できます。
楽天のサービスを活用すれば、もっと多くの人が安全に、そして安心してデジタルコンテンツを楽しんでもらうことができます。
それが楽天の目指す『NFTの民主化』です。
ー『NFTの民主化』が達成された未来はどうなるのでしょうか?
NFTが拡大すれば、スポーツやアート、音楽、ゲーム、アニメなどの産業がビジネスとしてさらに大きく発展する可能性があります。
また、これらの分野はファンがIPホルダー(知的財産権を持つ企業や人)を応援したり、イベントやコレクションで盛り上がったりするという特性があります。
楽しい体験を求めて、たくさんの人が交流をしています。
しかし、これまではNFTがなかったため、IPホルダーとファンとの一体感を醸成することが難しかったのです。
なぜなら、偽物が流通したり、転売が横行したりして、IPホルダーもファンも安心することができなかったからです。
これまでは音楽が不正にダウンロードされて流通したり、動画コンテンツが拡散して著作権が侵害されたりしています。
また、ファンもお金を出したのに偽物を掴んでしまったり、出所のわからないデータではないかと不安を感じたりしていました。
NFTがあれば、ブロックチェーン技術によって本物を証明できます。
IPホルダーもファンも安心してコンテンツをやりとりしたり、より一体感を感じたりしやすくなります。
『NFTの民主化』が達成されれば、新しい体験や価値をもっと多くの人が安全に楽しめるようになるでしょう。
ー『グローバル展開』については?
2023年以降、国内外のIPホルダーが保有するNFTのグローバルマーケットへの展開も検討しています。
NFT事業はグローバル展開する必要性があります。
なぜなら、デジタルコンテンツは世界中のどこででも楽しむことができるからです。
スポーツ選手やゲームのNFTカードをコレクションしたり、人気のアニメやアーティストの限定動画を売買したりすることが可能です。
特に日本のアニメ・マンガ・ゲームは、世界的に人気が高く価値のあるコンテンツとして流通しています。
世界中の人々に、より安全に安心して日本のコンテンツを楽しんでもらうためには、NFT事業はグローバル展開する必要があります。
ーNFTでグローバル展開するとなると暗号資産での決済も必要になりませんか?
「Rakuten NFT」は、今秋より暗号資産での決済に対応する予定です。
これまでの「Rakuten NFT」は、できるだけ簡単にNFTを楽しんでもらえるよう、法定通貨である円でのクレジットカード決済で購入が可能でした。
国内で『NFTの民主化』を進めるためには非常に良い組み合わせですが、グローバル展開をする上ではネックになると予想されます。
また、すでに暗号資産でNFTを楽しんでいるユーザーにとっても機能不足と感じられるでしょう。
なぜなら、NFTは暗号資産を使い、ウォレットとマーケットプレイスを接続した環境で楽しむことが一般的だからです。
そこで「Rakuten NFT」では、IPホルダーがコンテンツを発行および販売する1次販売において、暗号資産ウォレット「MetaMask」(メタマスク)を通じて、暗号資産「イーサ」(ETH)による決済を今秋から導入する予定です。
これにより、今後のグローバル展開がしやすくなるだけでなく、「Rakuten NFT」を通じてブロックチェーン技術を利用したサービスへの関心が高まったユーザーや、すでに暗号資産をお持ちの方も「Rakuten NFT」に参加しやすくなります。
また、IPホルダーからも暗号資産での決済を希望する声は多かったです。
暗号資産もウォレットも使わない日本独自の決済方法だけでは、「Rakuten NFT」がガラパゴス化してしまうという心配があったからです。
しかし、今後の「Rakuten NFT」では「MetaMask」を通じて、暗号資産「イーサ」(ETH)での決済が可能になります。
NFTのグローバル展開をしていきたいと考えるIPホルダーにもご満足いただけるものと考えています。
ー「Rakuten NFT」がグローバル展開した未来で期待することは?
「Rakuten NFT」がグローバル展開すれば、大きなビジネスチャンスを創出できます。
IPホルダーの優れたデジタルコンテンツを、データの改ざんや著作権の侵害から守りつつ世界中に配信することができます。
さらにそれがユーザー間で取引きされれば、IPホルダーはそのたびに収益を得られるようになります。
これまで違法な転売は、深刻な権利侵害でした。
IPホルダーには何もメリットがなく、ユーザーには偽物を掴むリスクがあったからです。
しかし、NFT化されたデジタルコンテンツなら、IPホルダーにとって二次流通が大きな収益源に変わります。
スマートコントラクトによって、取引きされるたびにIPホルダーに手数料が入るからです。
また、「Rakuten NFT」がグローバル展開すれば、世界中の人々が安心してデジタルコンテンツを楽しむことができます。
NFT化されたデジタルコンテンツは本物であることが証明されていて、それを簡単に売買できるようになるからです。
NFTをコレクションしたりコンプリートしたりする喜びやレアなNFTをゲットする感動がより一層高まります。
世界中でデジタルコンテンツの流通が活性化されれば、かつてないほどの巨大なマーケットが形成され、大きなビジネスチャンスが創出されます。
こうした誰もが安心してデジタルコンテンツを楽しめる未来を創るために、「Rakuten NFT」はグローバル展開をしていきます。
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