絵画や彫刻に代表されるアートの世界では、贋作やレプリカも数多く存在する。無論、素人の目にはその作品が本物であるか否かの判別が困難だ。このような市場環境であるからこそ、美術品を専門とする鑑定士が存在するのだ。
2021年3月には、有名百貨店で偽の版画が販売される事件も発生した。アート作品を扱う百貨店ですら偽物を見抜けないとなると、一般の消費者もリスクを承知の上で作品を購入しなければならなくなってしまう。この問題を放置すれば、結果としてごく一部の愛好家しかアート作品を楽しめない状況になるだろう。
このような課題を解消するために、NFTを用いたサービスを提供するスタートアップが存在する。東大発のベンチャー企業である「スタートバーン株式会社(東京都文京区)」だ。
同社のブロックチェーンインフラ「Startrail(スタートレイル)」では、アート作品ごとにNFTが発行される。このNFTを通じて、作品の取引履歴や鑑定結果のデータがブロックチェーン上に記録されるのだ。これにより購入者は、作品の出所に関するたしかな情報を得られる。
実際にStartrailは、クリエイティブコンテンツの領域でも採用されている。例えば、集英社において人気漫画の原画を商品化する手段として用いられた。この他にも読売ジャイアンツでは、選手のサイン入りグッズを販売する際に導入されているのだ。一体、Startrailは事業者と購入者の双方にどのようなメリットをもたらすのか。
このスタートバーン株式会社において最高戦略責任者を務める人物が、太田 圭亮氏だ。建築デザイナーとして活動した後に経営コンサルタントを経て、スタートバーンへ参画している。太田氏曰く、「資本主義とアートの間には、大きなギャップが存在する」という。このギャップに違和感を覚えたために、アート業界でのNFT活用に挑戦しているそうだ。果たして、建築やアートの業界はどのような課題が潜んでいるのか。またブロックチェーン技術を用いて、いかなる解決を目指しているのであろうか。
今回は、同社の執行役員である太田 圭亮氏へスタートバーン株式会社のブロックチェーンインフラを中心として、以下の項目について聞いた。
真贋証明やトレーサビリティに関する問題は、アートに限らず多くの業界が抱えているであろう。これらの課題はブロックチェーンとの相性が良いため、さまざまな事業者によって新たなサービスが開発されてきている。ブロックチェーン技術によるトレーサビリティを検討している読者にとっても、スタートバーンの取り組みは大いに参考となるはずだ。
スタートバーン株式会社 執行役員 最高戦略責任者 太田 圭亮氏
ーまず、スタートバーン株式会社の事業内容について、お聞かせください。
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